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篠崎 健太郎2016年9月にインターンとしてキュービックに入社。コンテンツメディアの立ち上げや全社横断のSEO技術支援などの経験を経て、2019年に新卒社員としてキュービックに入社。事業企画室を経験後、2020年よりメディア立ち上げ専門部署のマネージャーを務め、総合比較メディア『your SELECT.』などをリリース。
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宮川 達也大学卒業後、老舗編集プロダクションに入社し、雑誌編集・取材業務に従事する。その後、グラフィックデザイン会社に入社し、編集プロダクションを立ち上げ、取締役編集統括に就任。新規メディア事業会社の執行役コンテンツディレクターを経て、2019年5月キュービックに入社。主に新規立ち上げメディアの編集業務を担当。
「今よりもっとずっといい生活を」をテーマにした総合比較メディア。 自分にぴったりのサービス・商品を選べば、今よりも生活が豊かになることはわかっているけれど、数が多すぎてどれを選べばよいかわからない…という悩みの多い分野を扱っている。 転職をはじめサロン脱毛やクレジットカード、ウォーターサーバーなど、各分野の専門家が「選び方のコツ」や「おすすめの商品・サービス」をわかりやすく解説。正確性・専門性・独自性に富んだ記事で人生に新しい選択肢を増やす手伝いをしている。
従来ルールにはまらない、紙の編集力を活かした唯一無二のメディアを
篠崎
デジタルメディア業界ではあらゆる動きが数字で見えやすいこともあり、効率重視でKPIを追うことに目がいってしまいがちです。我々が身をおくコンバージョンメディアのマーケットにおいては特にその傾向が強く、成功例を分析し、差分を埋めていくアプローチが一般的です。
その結果、Googleなどの検索エンジンの攻略やPV数を増やすことにフォーカスしすぎて、画面の向こうにいる生のユーザーに向き合えていないメディアや、うまくいっているものを分析して真似ただけのメディアで溢れてしまいました。
そんな現状に対して、僕は紙媒体の世界と比較すると彩りがなく寂しい世界だなと感じました。そこでキュービックの「紙媒体の編集を取り入れる文化」というケイパビリティを全面に生かし、業界の常識とは反する“非効率だが彩りあるメディア”を作ろうということで『your SELECT.』を立ち上げました。
篠崎
宮川さんとはFAM(社内における家族のようなコミュニティ)が一緒だったんです。
それで仲良くなり一緒に飲みながら「もっとデジタルマーケ業界を鮮やかなものにしていきたいよね」と野望を語ったりして。目指すビジョンが同じだなと以前から感じていたので、メディア立ち上げの際にお声がけしました。
宮川
この話をもらったときは純粋に嬉しかったですね。楽しそうだなと。以前から「こんなのやりたいね、作りたいね」という話は二人でしていたので、いよいよ始まるんだなという感覚でした。
もともと雑誌を中心に編集をしていた僕がキュービックに入社したのは、紙の編集者のスキルが尊重される組織風土に魅力を感じたから。「真にユーザーのためになるコンテンツの質を目指そう」というキュービックの姿勢は、紙媒体の編集と通じるものがあります。
篠崎
“独自性”ですね。
先ほどお話ししたように、WEBは数値による検証がしやすいのでどうしてもそこに目が行きます。その裏返しで、検証できない事項、つまり「やっても効果があるのか実証しにくいこと」はやりにくい・やらない方が良いと判断されてしまうことも多いのです。
検索エンジンからの流入を主とするメディアにおいて、特に効果を検証しにくいのが独自性です。既に順位が上がっている競合との差分をひたすら埋める施策は再現性が高いのに対し、競合と全く違う施策を実行するのは再現性が低く、リソースもより多くかかります。ですから、一見すると独自性を追求するのは悪手なのですが、そこに挑んだ上でビジネスとして成功させたいという強いこだわりがあります。
宮川
デスクトップリサーチでたどり着いてしまうような答えを編集して記事にしても、本質的ではないなと思っているんです。口コミ評価に関しても、一つの商品しか使っていない人のコメントだった場合、それは主観の感想であって、商品評価の比較検討軸としてふさわしくないと思っています。
ユーザーが聞きたい、けれど普通に生活していては聞けないであろう、その分野の第一人者や有識者に話を聞いて、わかりやすく伝えていくことに価値があると考えています。
多数の商品を公平に比較した有識者だからこそ、自信を持って商品の良し悪しを消費者に伝えられるはずです。そのような情報を伝えることこそ、我々メディアを作る者の存在意義だと思っています。
一記事一記事、全力投球
篠崎
記事の制作をしてくれるパートナー企業探しには苦戦しましたね。僕らは、自分の手元で完結する業務については自分が頑張ればいいだけなのであまり壁を感じません。ただ、良質なコンテンツを生み出し続けるには編集プロダクションさんの協力は必須ですから、なかなか大変な道のりでした。しかしそこでも宮川さんの紙媒体での人脈がとても心強くて…
宮川
とにかく心当たりのある企業さんに声をかけましたね。我々の信条や、やりたいことを実直に伝えていって、それに応えてくださる編プロさんが増えていった感じです。記事を一緒に作りあげることで「想いが形になっていく」とはまさにこのことだなと体感しました。「基本的に他の会社と協業はしないけれど『your SELECT.』となら一緒にやってもいいよ」と言ってくださった編集プロダクションさんもありました。
他に大変だったことといえば、ウォーターサーバーなどの明確な専門家がいないジャンルについて誰に話を聞くか、ということでした。画面の向こうのユーザーは誰の話だったら聞きたいんだろう…と。
結果、ウォーターサーバーを家電の側面、インテリアの側面、水・生活インフラとしての側面に分解し、その商品群やサービスに詳しい方、複数名に取材をすることにしました。メディアの立ち上げ当初は、記事の練り込みは一本一ヶ月くらいかけ、二人で練り込みましたね。
篠崎
メディア名や会社名で表示される検索結果の増加が見られたときです。あとは、SNS上に書き込まれたメディアの評価を見つけたとき。特に同じ業界の方々から認められるのは素直に嬉しいですね。
宮川
さらに読者だけではなく、SELECTorと呼ばれる専門家の方に「掲載してもらえてよかった」と言われたことも、メディアの成長を実感したポイントです。『your SELECT.』への掲載がきっかけとなり、SELECTorさん宛に取材オファーがやってくるようになりました。『your SELECT.』が専門家のPRやブランディングを後押しできたのです。
宮川
何かの模倣で順位が上がっても意味がないと考えています。「未だ誰もやっていないこと」で勝てているのは、“全ての記事で独自取材を行う”というコンセプトメイクを初期からできていたことが要因でしょうか。
取材を受けてくださった専門家の言いたいことを尊重する、都合よく切り取らないことも心掛けています。基本的なことのように聞こえますが、CVメディアで商品を紹介する場合、成果報酬単価順にオススメが並んでいたり、取材内容を一部だけ切り取ったりすることがあるように思います。公平性の担保はデジタルメディア業界における大きな課題のひとつです。
さらに読み物としての面白さを追求していること。これも理由かもしれません。読み飽きないような表現の工夫をしたり、文字だけでなく写真にもこだわったり。雑誌のようなクオリティを目指しています。
そして、メディアの制作者である僕らが「作っていて面白い」と感じていることも無視できないでしょう。制作者の想いって自然とコンテンツの質に影響していきますから…
コンテンツメディアは「網羅性を高めるためテールワードの記事を量産」しがちですが、ぼくらは網羅性と決別し、一記事一記事全力投球のものを作っているという自負があります。
やりたいことは、市場の創造
宮川
今は、専門家の力や知識をお借りしながら、ユーザーのリテラシーの格差を埋める情報を届けている状態です。これからは、先ほどお話したような『your SELECT.』きっかけで専門家が他媒体に出演するなどのシナジーをもっと生み出せるようになりたいですね。専門家のみなさんが「このメディアならすすんでインタビューを受けたい!」と思うようなメディアに育てていきたいです。
篠崎
『your SELECT.』のような成功例をたくさん作り、業界のスタンダードを牽引するような立場にキュービックを押し上げたいです。
ユーザーと愚直に向き合うことや、メディアとしての独自性を大事にすることが利益にもちゃんとつながるということを確かに示したいです。効率重視でやる会社が正義という世界から、クリエイティビティ重視でやる会社もあっていいよねという世界へ変えていきたいですね。
紙の業界ではクリエイティビティが重視されているように思いますが、WEBメディアの世界では現状そうではないのかなと。ただ、市場として伸びていくのはWEBの方だと思っているので、ぜひ紙の世界で豊富な経験をされた方のクリエイティビティを存分に取り入れていきたいです。
メディアの将来としては、プロダクトに昇華させたいと考えています。たとえばクライアントや読者の方に何か提供してその対価をいただいたり、メディアで紹介しているような商品やブランドさんとのコラボを積極的に進めたり。
「“市場の創造”を一緒にやりたい!」と感じてくれる人と一緒に、デジタルメディア業界を変えていきたいと思います。