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「法律の勉強はビジネスの役に立つのでしょうか」

「法律の勉強はビジネスの役に立つのでしょうか」

「法学部で法律を学ぶことは、ビジネスの現場で役に立つことがあるのでしょうか?」

先日のStart Venture Festival 2016 springで、学生からこんな趣旨の質問を受けた。パネルディスカッションの自己紹介で、法学部に在籍して弁護士を目指してから起業にピボットした僕自身の経歴に触れたため、そこに反応してくれた形だ。

一人二人ならまあそういう疑問もあるかと思うが、同様の質問が(おそらく法学部に在籍していると思われる)学生から相当数寄せられたことには少し驚いた。確かに、弁護士や裁判官などにならない限り、法律が社会人としてのビジネスの現場でどう生きるのか、自分が学生の時にも全く理解できていなかったように思う。

ビジネスを学ぶために経済学部にスイッチしようか悩んでいるという学生までいたが、それは意味ないからやめろと伝えた。同様の疑問を持つ法学部の学生のために以下をちょっとまとめてみる。

1.法律の勉強は社会に出てからは基本的にできない

社会・経済に関する話は社会に出てからいくらでも仕事を通じて学ぶことができるのに対し、法律については大手企業の法務部にでも就職しない限り学ぶ場は得られない。

しかも、大人になってからは数年に1回ぐらいは法律問題にぶつかる。会社取引関係でのトラブル、親戚の相続問題、住んでる家やマンションの問題、退職や転職の時の会社との関係などなど。

学生の時に軽く学んだことを覚えておけるものでもないだろう。法律もガンガン変わるので使い物にならない知識もある。が、根本の法律の精神や設計思想ごとガラリと変わることはそうそうない。学生のうちに一通り学んでおくことは決して無駄ではないと感じる。

2.問題解決のための思考法が身につく

法律や法律の条文は、ものすごい数が存在するし絶えず増え続ける。それでも事象は無限。有限である法律が無限に起こる全ての事象をカバーすることなどできない。

だから法律には「解釈」が必要になる。

条文を当てはめるだけで解決できないような法律問題も多いーというかモメるのはだいたい法律の条文でストレートには表現されていない事件。そりゃモメる。

じゃあどうするかというと「解釈」。つまり「この法律の趣旨は何なのか」「この法律で守ろうとしているのは誰のどういう利益なのか」を読み解いて事件に当てはめていく。

これはビジネスそのものだと感じる。ビジネスは、答えのない問いとそこに向かう問題解決の繰り返し。思考のパターンとして「もともとの趣旨に立ち返る」「それを説得的にアウトプットする」という思考技術や、「そもそも上司に教わる座学が全ての仕事に当てはまるものではない」と事象に合わせて自分の頭で考える癖を、学生のうちから頭に叩き込むのは悪いことじゃない。

もちろん、以上はマジメに法律の勉強をすることが前提である。僕の場合、形にはならなかったものの司法試験の勉強を死ぬ気でやったことはいろんな場面に生きていると感じる。

3.そもそもビジネスの現場で役に立つ専門知識を大学で学ぶことは不可能

特に文系の場合、大学で学んだ専門知識がビジネスの現場で生きていると答える社会人は10%もいないように思う。経済学部だろうが社会学部だろうが関係ない。

どちらかというと大事なのは学部の選択ではなく授業の選択(これもたぶん関係ないけど)。もしくはゼミなら様々なタテのつながりが期待できることもあって、悩む価値ぐらいはあるのかもしれない。ちなみに僕はゼミも卒論も何もやってない。テヘ

4.希少価値の高い職種の友達ができやすいかも

とはいえ、法学部卒は文系専門職に就く人間の数が他の学部と比べて多い。弁護士など法律関係の職種や国家公務員、果ては政治関連など、簡単につながりを持てないような友達を持つことができる可能性が高いのも法学部。

なお、30万人ほどいる医師の総数に対し、弁護士の総数は圧倒的に少ない。

まとめ

法学部は他の学部より就職に有利だとか出世に有利だとか、そのへんの事情はモチロンよくわからない。大学によっては法学部よりも入学難易度の高い文系学部や社会的に評価の高い学科もあるんだろうし。

僕も、大学なんか行かずに高卒でいきなり起業しておけばよかったと後悔した時期があった。が、今はその後悔はない。学生時代に出会った友人が30歳を過ぎてデカい仕事で活躍を始めた。応援し合いリスペクトし合える仲間がいることの価値は何物にも変えがたい。

ということで、せっかくだから法学部の学生は法律の勉強ぐらいやっときなさい。