ドイツとスイスの国境に位置するフランス北東部アルザス地方。「美女と野獣」の舞台となっている絵本のような街並みとちょっと不思議な伝統スイーツに魅せられ、アルザスのパティスリーで働くことを決めたのは、料理研究家でYouTuberのRalu(ラル)さん。
「スイーツは私のご機嫌をとってくれるもの」という彼女に、かわいくておいしい“フレンチスイーツ”の魅力について伺いました。
「自分のための休暇や家族と一緒に過ごす時間を大切にするフランスの文化が、その時間をもっと楽しくするためのスイーツの需要を増やし、発展させてきたと思う」と語るRaluさん。忙しい日々に追われがちな私たち日本人はなおさら、自分をご機嫌にするごほうびスイーツが必要かもしれません。
- 「かわいくて、おいしい!」フレンチスイーツの魅力
- フランチスイーツ文化を育てる”自分を癒やすマインド”
- パリパリとろり!紅茶クリームブリュレの簡単レシピ
- 「最高に幸せなケーキ」を目指して
「かわいくて、おいしい!」フレンチスイーツの魅力
料理研究家の母のもとに生まれ、自然に料理をするようになったRaluさん。特に好きだったのは、おいしいだけでなく、デコレーションできれいに仕上げた見た目もかわいいスイーツだったそう。「大学生のときに、新宿にあるラデュレというお菓子屋さんのマカロンに一目ぼれしたんです! 将来の進路に悩んでいた時期に、かわいいとおいしいがミックスされたラデュレの世界観に魅力を感じて『これだ!』って。ちょっとぜいたくで、気分が上がるスイーツを私もつくりたい!って思いました」
その後、通っていた大学を中退し、パティシエの専門学校へ。学校の研修旅行で訪れたフランスのアルザス地方は、Raluさんの大好きな「かわいくて、おいしい!」にあふれていたのだとか。「みんなパリが良かったねって言ってる中、私ひとりだけアルザス最高!って騒いでて(笑)。パリのお菓子も洗練されて素敵だったけど、アルザスは『なにこれ!?』みたいな不思議な形のお菓子が多くて、すごく魅力的だったんです」
「例えば、クリスマス前の12月最初の週には、店頭にマナラという、人の形のパンが並ぶんです。サン・ニコラの日といって、聖ニコラが子どもを助けた物語にちなんで、人の形にデザインして焼いた甘いパンを食べる風習があります。ベルギーだと同じ日にサン・ニコラの形をしたチョコを食べるみたいなんですけど、アルザスはなぜか助けられた子どもの方をかたどったパンが伝統で。街中のパティスリーに並ぶ姿がすごくかわいいんです」
フレンチスイーツ文化を育てる“自分を癒やすマインド”
月ごとに変わるキュートな伝統菓子にワクワクしながら「食べる人をもっとご機嫌にするスイーツ」づくりを学んだRaluさん。アルザスで暮らす中で、お菓子づくりの技術の高さだけでなくフランスの人々の「スイーツのある生活」の魅力にも気がついたといいます。
「フランスはスイーツに対するリスペクトの気持ちが大きいんです。私が働いていたケーキ屋さんは朝7時オープンだったんですけど、朝からみんなケーキとコーヒーを楽しみにくる。ケーキ屋さんが日本でいうカフェみたいな役割で、朝からにぎわうんです」
日本よりも日常的にスイーツタイムを取り入れているフランスのカルチャーは、そもそも「自分と家族を大切にするマインド」から生まれたんじゃないか、とRaluさんは考えます。「フランスは労働時間が短いから、夜遅く帰る親があまりいなくて。家族の時間を大事にする国なんです。だからコーヒーとクッキーとか、その時間を楽しくするためのスイーツが発展してるんだと思う。需要があるから値段が高くても売れるし、パティシエへのリスペクトも大きいんです。日本よりも、休みをしっかりとる文化も根付いてますね。フランスのバカンスって最大で5週間連続で休んでOKの長期休みなんですが、同僚は『週に2回しか休みがないし、バカンスも年に2回しかない!』ってすごく怒っていて(笑)。国民全体が、自分を癒やす時間を尊重する国なんですよね」
自分を癒やすために、誰かと一緒に楽しい時間を過ごすために、つくられ食べられるフランスのスイーツ。ついつい働きすぎてしまう私たち日本人は、そのスイートなマインドから真似してみるべきなのかもしれません。
パリパリとろり!紅茶クリームブリュレの簡単レシピ
「スイーツは自分の機嫌をとってくれるものっていう言葉は、私にとっては”食べる”より”つくる”ときにぴったり。このスイーツをつくった先で、誰かが喜んでくれていることがすごくうれしい」。食べてご機嫌、つくってご機嫌な、まさにごほうびスイーツの簡単レシピをRaluさんに教えてもらいました。誰かを招いて一緒にスプーンでパリパリしても盛り上がる、紅茶のクリームブリュレのレシピです。
〈材料(2〜3人分)〉
卵黄3個、グラニュー糖40g、生クリーム200ml、牛乳60g、紅茶(アールグレイ)のティーバッグ1包
※上にかける分:グラニュー糖50g
1. 卵は卵黄だけ。卵黄とグラニュー糖40gをよく混ぜます
2. 生クリームと牛乳を鍋で温め、沸騰したら一度火を止めて、ティーバッグを入れます
(使用する茶葉の抽出時間に合わせて煮出してください)
3. 人肌くらいに冷ましてから、1へ加えて、こし器でこします
(茶こしなどを使ってもOK!)
4. ココットに流し込み、アルミホイルで全体を包み込みます
5. 鍋or深めのフラインパンに水をはり、ココットを入れて15〜20分くらい蒸したら、冷蔵庫に入れて2〜3時間冷やしてください
6. 鍋にグラニュー糖を入れ、きつね色になるまで溶かしたら、冷えたココットの上に流し込み、固まれば完成!
「映画の『アメリ』にもクリームブリュレをスプーンで割るシーンが出てきますが、固い表面をパリッと割ることが、行き詰まった状況を脱するとか、殻を破るという意味が込められている幸せのスイーツなんです。スプーンでコンコン、パリッと割って、中に入ったとろとろのクリームを味わって、ぜひハッピーな気持ちになってみてください」
「最高に幸せなケーキ」を目指して
Raluさんはアルザスから帰国後、日本で料理教室を開催したり、YouTubeでレシピを公開するなど、スイーツづくりから生まれるハッピーをシェアする活動を行っています。「#happiestcakes(最高に幸せなケーキ)」というコンセプトで、その人の好きなものをデコレーションしたオーダーケーキをつくっていたこともあるのだそう。スイーツ=ハッピーという彼女のこの考え方は「人生で印象に残っているハッピーな瞬間にはいつもスイーツがあった」という経験から生み出されているようです。
「小学生のとき、おばあちゃんに誕生日ケーキをつくったことがあるんです。できあいのスポンジにデコレーションだけして。上手ではなかったけど、おばあちゃんがすごく喜んでくれたのがうれしかったことを覚えています。その後、両親が離婚して父と兄二人と暮らしたのですが、初めて母がいないクリスマスに仕事で疲れて帰ってきたら、私が昔おばあちゃんにつくったような、生クリームを塗っただけのケーキが用意してありました。父はどういう想いでそのケーキをつくったんだろうと思うと、うれしくて涙が出ました。そういうスイーツにまつわる瞬間が忘れられないんです」
自分と大切な人を大事にするために食べるスイーツは、とろけるような甘さと一緒に思い出に残ります。きっとあなたを癒やしてくれる、フレンチマインドなスイーツタイムを、日々のごほうびに設けてみてはいかがでしょうか?
Profile
Ralu
料理研究家・YouTuber料理研究家を母にもち、幼い頃から包丁を握って料理やお菓子づくりを学ぶ。服部栄養専門学校パティシエ・ブランジェクラスを卒業後、2017年に単身で渡仏し、アルザスのpâtisserie Charles SCHMITT でパティシエとして勤務。帰国後、国内で料理研究家として活動開始。フランス生活で得た経験を生かし《料理をもっと楽しもう!》をモットーに、2018年12月から菓子教室「La Bonne école de Ralu」を主宰している。
Instagram:https://www.instagram.com/ralunny/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/ UC9X0lR0QiiHaVBXhmGYoV0Q
取材・文/赤木百(Roaster) 撮影/有坂政晴(STUH)
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