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移りゆく季節を和菓子とともに。 見て食べて楽しむひとときを

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移ろいゆく一瞬が とじこめられた和菓子を 味わう幸せを感じて

「日々の生活の中で出合うあらゆるものから受け取った“印象”を、和菓子という形で表現しています」と話すのは、和菓子作家として国内外で活躍する坂本紫穗さん。彼女の感性から生み出される儚(はかな)げで美しい和菓子は、世界中から注目を浴びています。

和菓子は「季節の移ろいを映すもの」と坂本さんは言います。仕事に追われて忙しいときも、和菓子を楽しむ時間があると、あなたに自然のリズムを思い出させてくれます。ほんの一瞬でも自然に目を向けることで、自分を客観的に見つめる余裕も生まれるかもしれません。坂本さんに、和菓子が与えてくれる喜びについてお話を伺いました。

  1. 移ろい、やがて消えてしまう儚さが和菓子の魅力
  2. 日々のごほうびに和菓子という選択
  3. つくり手の思いを感じ、想像できる楽しさ
  4. よみがえる記憶、自然のリズム、和菓子がもたらす喜び

移ろい、やがて消えてしまう儚さが和菓子の魅力

仕事に追われていると、一日中パソコンの画面や資料とにらめっこで、窓の外を眺める暇もなく、気がつけば日が暮れていたなんていうこともあるでしょう。忙しいときこそ、肩の力を抜いてほっとひと息入れるおやつタイムを意識的に取り入れたいもの。特に、眺めるだけでも心が満たされるような美しい和菓子は、癒やしの甘味としておすすめです。きれいな見た目と口に入れたときの優しい甘さが、疲れた心を静かに解きほぐしてくれるはず。

和菓子は季節の移ろいや、はっきりと言葉にできない情緒的な感情を表現するもの。それが、坂本さんが和菓子に魅了された要因のひとつだといいます。
「昔から、小さくて繊細で、ゆらぎがあるもの、均一でないものが好きでした。儚いものへの憧れが強かったのを覚えています。全てのものは日々移ろい、止まることがないですよね。だからこそ、目の前の一瞬一瞬を大切にしたいと思っています」

坂本さんにとって和菓子とは、その「大切にしたい儚い一瞬」を形にしたもの。すぐにでも失われてしまいそうな尊さを形にするからこそ、お皿の上の和菓子を前に、食べる人は優しい気持ちになれるのかもしれません。

日々のごほうびに和菓子という選択

和菓子を作る坂本さん

「和菓子を味わう余裕がもてたら、日々の生活で縮こまってしまった心や体も、ふっと軽くなると思います」と坂本さん。甘味が欲しいと思ったら、気になる和菓子屋さんでまずは和菓子をひとつ買って、お気に入りのお皿に盛ってみる。「お菓子の種類によっては、自分で好みのきなこや蜜をかけてみてもいいですよね。きなこも大豆のいり具合によって種類が異なるので、いろいろ試してみるとおもしろいかもしれません」

和菓子だからといって、いつもちゃんとした菓子皿や抹茶を用意しなければならないわけではない、と坂本さんはいいます。「和菓子も種類によっては、コーヒーや紅茶に合うものもたくさんあります。ダージリンやアッサムなど香りが複雑すぎない紅茶に、練り切りを合わせるとおいしいですよ。日本酒やウイスキーなどと合わせる大人の楽しみ方もあります」

いろんなマリアージュを試してみる自分だけのひととき。そのような楽しみを見つけることができたら、心が満たされる充実した時間を過ごすことができそうです。

つくり手の思いを感じ、想像できる楽しさ

クライアントの希望したテーマに合わせて、企業やイベントのためのオーダーメイド和菓子をつくっている坂本さん。自身の開くワークショップや和菓子教室で、外国の方やお子さまに和菓子を説明するときには「和菓子は、一人一人のために作られるもの」と説明しているそう。「和菓子の一つ一つに細かな気遣いや思いやりが注がれていることを知ると、いっそういとおしくなりますし、それを想像しながら食べるのも和菓子の楽しみ方の一つだと思います」と坂本さんはほほ笑みます。

とはいえ、「あまり難しく考えすぎず、食べる人が菓銘を読み、お菓子を眺めながら自由に解釈できる余地があるのも魅力」なのだとか。アートを鑑賞するかのように「このお菓子にはこの小説がぴったり合うなぁ」「この色には、こんな意味が込められているのでは?」と、食べる人が自由に想像して楽しんでくれることが、つくり手である坂本さんとしても、うれしいのだと語ってくれました。

IT企業でサービス企画をしていた坂本さん

つくり手の思いが詰まった和菓子だからこそ、そこに、贈る人の気持ちを託すこともできます。「大切な人の顔を思い浮かべながら選んだ和菓子を持って、その人に会いに行く。そんな時間を過ごせたら素敵ですよね」と坂本さん。「もうすぐ紅葉の季節なのね」「この色は季節の花の色かしら?」と、誰かと一緒に旅するようにお菓子を楽しむのって幸せだと思いませんか。

よみがえる記憶、自然のリズム、和菓子がもたらす喜び

和菓子の多くは季節の移ろいがテーマになっていることもあり、その季節に関連する思い出をよみがえらせてくれるのも魅力。「日本で育った私は桜のお菓子を目にすると、きれいだな、おいしそうだなと思うだけでなく、これまでの桜にまつわる記憶も一緒に思い出したりします。そのように原体験を思い出させてくれることも和菓子の味わいだと思います」

和菓子は、微妙に移りゆく季節に目を向けるきっかけをくれるものですが、それは見た目だけでなく、材料からも感じ取ることができます。春夏には、つるっとした食感で見た目も涼しげな錦玉(寒天と砂糖を煮詰め、冷やし固めたもの)がよく使われますし、秋冬になると、芋や栗などが入っていたり、きなこや黒糖で香ばしさが出ていたり。そんな変化を観察しながら和菓子を楽しむことで、自然のリズムと寄り添うことができるのです。

常に走り続けてしまう現代の私たちをふと立ち止まらせてくれる和菓子。その優しい甘さに包まれながら、日々の雑事を忘れ、自分だけのぜいたくなおやつタイムを過ごすのも、誰かと一緒に分かち合うのも豊かな時間です。そこに込められた情景や思いに心を寄せて、今日は和菓子をいただきませんか。

RECOMMENDED ITEM!

有機ほうじ茶2缶

有機抹茶・有機ほうじ茶2缶(各1缶)セット/SHUHALLY(シュハリ) ¥4,400(税込)

坂本さんがお茶会のお菓子制作を依頼されている裏千家茶道教室「SHUHALLY(シュハリ)」が、オリジナルで販売している京都宇治産の有機抹茶と有機ほうじ茶。缶のビジュアルは、国内外で活躍する画家JUN INOUE氏による美しいデザイン。和菓子と一緒にプレゼントするのも良いかもしれません。
HP:https://shuhally.jp/

Profile

坂本紫穗
和菓子作家

日々の暮らしの中で受け取ったさまざまな印象を、和菓子という形で表現する和菓子作家。企業やイベントのためにオーダーメイドの和菓子を制作・監修し、国内外での和菓子教室やワークショップ、展示、レシピ開発なども行う。
HP:https://shiwon.jp/

取材・文/矢本祥子 構成/大倉詩穂(Roaster) 撮影/藤井由依(Roaster)

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