「十数年毎日焼いているのに、オーブンから出すたびに、丸くてかわいいなって思うんですよ」。そうはにかみながら語るのは、代々木八幡のベーグルショップ「tecona bagel works(テコナ ベーグル ワークス)」の店長、小林千絵さん。ビジュアルがかわいくてヘルシーとあって、人気が高まっているベーグルの魅力と、さらにおいしく食べる簡単アレンジを教えてもらいました。
例えば、いつも朝に食べている食パンをベーグルに変えてみる。ディップをサンドしてみたり、お気に入りのコーヒーと一緒に食べてみたり。ほんの少し、簡単なアレンジを加えるだけでよりハッピーな朝を迎えられるはず。ベーグルで毎日をもっと特別にするコツをお教えします。
- 行列ができるベーグル専門店「tecona bagle works」の秘密
- 「ふか」「もち」「むぎゅ」が合言葉! 食感ごとに変わるベーグルのおいしさ
- 食感別! おうちベーグルを手軽に楽しむ食べ方レシピ
- シンプルなベーグルが華やかに変わる! ディップでできるちょい足しアレンジ術
行列ができるベーグル専門店「tecona bagel works」の秘密
東京のベーグル専門店といえば、真っ先に名前が挙がる「tecona bagel works」。連日、そのおいしいベーグルを求めて、長い列ができる人気店です。特に人気が出てきたのはここ2〜3年のこと。口コミでじわじわと評判が広がって、今ではキャリーバッグを引っ張って、地方から買いに来るお客さんもいるほどだとか。
人気の秘密はパティシエ出身の小林さんが生み出す、多様で絶妙な味の組み合わせ。季節の食材を取り入れた60種類以上のベーグルが常に店頭に並び、常連のお客さんでもお店に行くたびに新しい味との出合いがあるそう。「スパイシーカレー&そら豆」「チーズ肉まん」といったお総菜系から、「プルーンの赤ワイン煮チョコクリーム」「アールグレイキャラメルラムレーズン」などの甘い系まで、聞くだけでお腹がすくメニューばかり。
「味を決めるのは、スイーツの一皿を考えるやり方に近いです。鼻に抜ける香りや、全部食べ終わったときの残り香、かんだときの食感など、全てをイメージしながら考えています」
そもそも、ベーグルは「ニューヨークの朝食」というイメージですが、「実際、海外のベーグルは硬くてボソボソしている印象」と小林さん。パティシエを辞めてベーグルをつくり始めたとき、まずは日本人の好みに合う食感に改良し、味とバリエーションを増やしたのだそうです。
「ふか」「もち」「むぎゅ」が合言葉! 食感ごとに変わるベーグルのおいしさ
小林さんがこだわるのはベーグルの食感。「ふか」「もち」「むぎゅ」と名前がつけられた異なる3種の食感をつくり分けています。
食感の違いは、生地に使う酵母(生地を発酵させる微生物のこと)と粉を変えることで調整しているのだそう。
まず「ふか」は、一般的なパンにも使用する酵母「イースト」を使ったもの。口に入れたときのふわっと感と、鼻に抜ける香りが特徴です。
「もち」は自家製酵母で10日間ほど発酵させることで、かんだ瞬間もっちりと、生地のおいしさを感じることができます。
「むぎゅ」はかみ応えがあって、みっちり詰まった食感。日本古来の醸造技術によってつくられた「ホシノ天然酵母」を使い、低温で熟成するように発酵させているそうです。
味の組み合わせを考える中で、食材と食感との相性までこだわりぬいてつくる小林さんのベーグル。「水分が多いいちごを使うときは『ふか』の食感がいい」というように食材に合わせて食感を考えるというから驚きです。
そんな小林さんにお気に入りのベーグルを教えてもらいました。「お店にはこってりしたものが多いんですが、私は生地のおいしさを味わいたくて、シンプルなものを選びがちです」
「ほうれん草とベーコン」は小林さんが個人的に好きなメニュー。「味が濃いほうれん草のピューレを生地に練り込み、中には角切りのベーコンがゴロンと入っています。そのまま食べてもこってりですが、半分に切ってクリームチーズをつけてもおいしいです」
「シナモン蜜りんご」は定番メニューのひとつ。「もち」の生地に、シナモンがしっかりとかかった硬めの蜜りんごが入っています。表面にオートミールをかけた、ザクザク食感が楽しい。「ちょっと焼いて、バターをつけて食べるのもおすすめです」
「チョコバナナクリーム」は手間をかけてつくられる味。「ドライバナナを洋酒と蜂蜜で漬け込んだものに、クリームチーズとココアを混ぜて、バナナチョコクリームをつくります。そのクリームとバナナのあんをチョコレートの生地に混ぜ込んで完成。甘いけれど、ちょっと大人な味わいです」
食感別! おうちベーグルを手軽に楽しむ食べ方レシピ
冷凍庫に入れておけば2週間は保存できるという、日持ちの良さもベーグルの魅力。おうちで日常的にベーグルを楽しむときの、おすすめの食べ方を教えてもらいました。
まずは「スライスしてトースターで焼き直してみてください」と小林さん。「生地の周りがパリッとして、食感がはっきりとわかるので、いろんなベーグルを食べ比べると楽しいと思います」
「『ふか』のように食感が軽めのベーグルは、食パンの代わりとして、サラダや目玉焼きと一緒に」
「『もち』のようにほどよい硬さのベーグルはコーヒーと一緒にシンプルに食べるのがおすすめ。スライスして焼いて、クリームチーズを挟んで食べる。簡単だけど生地の味を楽しめますよ」
「『むぎゅ』のようにぎっしり詰まった食感は、スープと合わせるとちょうどいい。冬はかぼちゃなど濃厚なポタージュにつけて食べるとおいしいと思います」
ベーグルは一般的なパンとは異なり、油脂や乳製品を使っていないため、素朴でヘルシーな味わい。見た目もかわいいベーグルをパンの代わりに取り入れてみると、日々の食事をもっとヘルシーに楽しめるかもしれません。
シンプルなベーグルが華やかに変わる! ディップでできるちょい足しアレンジ術
tecona bagel worksはベーグルに合わせるディップの販売も。お家でベーグルをスライスしてのせるだけで、簡単におしゃれなアレンジを楽しむことができます。
今回は「黒いちじくの赤ワイン紅茶煮+クリームチーズ」を使って、簡単ベーグルサンドをつくってもらいました。
ベーグルは「レモン紅茶」をセレクト。アールグレイとレモンの爽やかな香りに、濃厚ないちじく&クリームチーズが相性抜群のぜいたくアレンジです。
「夢はベーグルが日常食になることです」と小林さん。朝、食卓にベーグルが並んでいるだけで、ホテルのモーニングをいただくような幸せな気持ちになれるはず。自分好みの味と食感を見つけたら、おうちでアレンジレシピを試してみてはいかがでしょうか。
Profile
小林千絵
tecona bagel works店長パリのパティスリーとレストランで修業。帰国後はパティシエとして働きながら、デザートのレシピ開発、技術指導、パティスリーの立ち上げなどに携わる。その後、今のオーナーに誘われ「tecona bagel works」の店長に。2016年にはレシピ本『テコナベーグルワークスのまいにち食べたいベーグルの本 -少しのイーストでふかふか、もちもち、むぎゅむぎゅの3食感が作れる55レシピ-』(マイナビ出版)も出版。
取材・文/森美和子(ミニマル) 構成/宮垣歩乃佳(Roaster) 撮影/藤井由依(Roaster)
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