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ひとつまみで魔法をかける! いつもの料理が激変する スパイスの活用法

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個性あふれるスパイスを プラスすれば おいしさの扉が開く

ペッパー、シナモン、コリアンダー、クミン、カルダモン、ターメリック……。料理に風味をプラスしたり、素材のくさみを消したりする“縁の下の力持ち”として愛されてきたスパイスが今、新しい「おいしさ」の扉を開くキーアイテムとして、表舞台でスポットを浴びつつあります。

「スパイシーなエスニック料理に使うもの」というイメージがまだまだあるかもしれないけれど、固定観念を捨てていろんなものにプラスしてみれば、マンネリになりがちな日々の食卓がワクワクするような驚きと感動に満ちたものになるはず。
そこで今回はフードデザイナーの中本千尋さんに、スパイスを日常的に活用するためのヒントと初心者向けレシピを教えてもらいました。

  1. 個性あふれるスパイスで、料理をよりクリエイティブに
  2. 固定観念を捨てて、まずは好きなメニューにちょい足し!
  3. スパイス入門におすすめ、アレンジ無限大の「スパイスナッツ」
  4. ひとさじのスパイスで、スペシャルなティータイムも!

個性あふれるスパイスで、料理をよりクリエイティブに

最近はスパイスカレーを筆頭に、スパイスの持ち味を前面に押し出したメニューが、若い女性を中心に大人気。焼き菓子やジェラートなどのスイーツにもマニアックなスパイスが効果的に使われていて、「独特の風味やクセがおしゃれで新しい!」と魅了される人が続出しています。

オリジナルのスパイスを開発するなど、スパイスマスターとしても知られるフードデザイナーの中本千尋さんも、その魔法に魅せられたひとり。きっかけはフードデザイナーとして独立した直後、間借りカレーの店を始めたことでした。

「最初はひとりで店をするなら、事前に仕込んでワンディッシュで提供できるカレーがいいな、ぐらいの気持ちで始めたんです。でも、実際にカレー屋さんをやってみて、スパイスって想像以上におもしろいと気づきました。単独でもそれぞれにユニークな個性があるのですが、組み合わせることでさらに新しい個性が生まれて……。同じ材料を使ったカレーでも、つくる人のさじ加減でまったく違うものになる。使う人のセンスや個性がダイレクトに出るのがおもしろくて、スパイスってこんなにクリエイティブなものなんだ!って感動しました」

中本さんとスパイス

中本さんにとってスパイスのいちばんの魅力は、自分だけの個性やセンスを手軽に発揮できること。そして、その日の気分や体調によってアレンジを楽しめること。

「たとえば市販のバニラアイスでも、思いつきでブラックペッパーをひとふりするだけで特別感のあるシャレたデザートになるし、『この人センスあるな』と思わせることができます(笑)。また、料理をおいしくするだけでなく、効用が期待できるのも魅力。今日は冷えるからジンジャーを多めに入れて体を温めようとか、ちょっとリフレッシュしたいから清涼感のあるカルダモンを加えようとか、同じメニューでもスパイスの配合を微妙に調整しながら、体や気持ちの変化を感じられるのも実験みたいでおもしろいんです」

つくる人が感性のひらめくままにアレンジして、心身とのつながりを体感できる。そんな自由さと奥深さが、スパイスの魅力のようです。

中本さんが開発したオリジナルブレンドスパイス

固定観念を捨てて、まずは好きなメニューにちょい足し!

ブームに乗ってスパイスをそろえてみたものの、うまく使いこなせずキッチンに眠っている……という人も多いはず。どうすればスパイスを日常的に使うことができるのでしょう?

「シナモンは甘い料理に合う、ナツメグはひき肉料理に使う……といった固定観念を捨てて、凝った料理ではなく、まずはふだん自分がよくつくる料理に少しだけ加えてみる。そうするとスパイスって実は、どんな料理にも気軽に使えるということに気づくと思います」

例えばトマトソースを煮込むときに塩と一緒にクミンを加えたり、焼き菓子の生地に香りづけとしてクローブを足したり、野菜のバターソテーの仕上げにナツメグをふってみるなど、ちょい足しから始めてみるとスパイスの個性や相性がつかみやすいそうです。

スパイスの瓶

「新しいスパイスを買わなくても、家に眠っているスパイスがあれば、まだまだ使えるので捨てずに活用してほしい」と中本さんはいいます。「スパイスって実は厳密な消費期限がないといわれています。ただ長期間放置していると、香りが消えていたり湿気たりしていることが多い。そんなときはフライパンに油を引かずにスパイスを入れて、弱火で数分間空いりしてあげると余計な水分が飛んで香りもよみがえりますよ」

購入する場合は、スパイス専門店を利用すると新鮮なものが安く手に入るそう。中本さんはいつも「神戸スパイス」や「香辛堂」といった専門店の通販を利用しています。「特に『香辛堂』はひきたてのものが少量から買えるので、いきなり大袋を買うのは不安というビギナーにぴったりです」

スパイス入門におすすめ、アレンジ無限大の「スパイスナッツ」

とはいっても、ふだんから料理をあまりしない人には、気軽に使うこと自体ハードルが高いもの。もっと簡単にトライしたい人に中本さんがおすすめするのが、市販のミックスナッツを使った「スパイスナッツ」です。

「あらかじめローストしてあるミックスナッツを使えば、フライパンひとつで数分あれば完成します。どんなスパイスでもできますが、今日は台湾料理でおなじみの五香粉(ウーシャンフェン:花椒、クローブ、シナモンに、スターアニスやフェンネルなどを加えたミックススパイス)でつくってみましょう」

スパイスナッツ作り方

ルーロー飯か台湾風唐揚げぐらいしか使い道が思い浮かばなかった「五香粉」が、まさかミックスナッツに合うとは! 「甘じょっぱい味に異国情緒漂う独特の風味が絶妙にマッチして、おやつにもお酒のおつまみにもぴったり。後引くおいしさで、ひとつ、またひとつ……と食べているうちに、いつの間にかお皿が空になっている危険なヤツです(笑)」

スパイスナッツ

ひとさじのスパイスで、スペシャルなティータイムも!

調理や味変だけでなく、実はドリンクにもスパイスは大活躍します。飲みものに使う場合は、飲んだときの粉っぽさを避けるため、粉に加工されていない原形の「ホールスパイス」を使うのがおすすめとか。

「コーヒー豆と同じで、あらかじめひいて粉になったスパイスは便利だけれど、そのぶん風味も飛びやすいんです。チャイの場合は特にパンチの効いたスパイス感を楽しみたいので、使う直前にホールスパイスをすりつぶすのがいいです。すり鉢などでつぶすだけなので意外と簡単だし、何より香りのフレッシュさに感動しますよ」

使う直前にすりつぶす

では、中本さんのイチオシ、スパイスの鮮烈な風味がたまらない「スパイスチャイ」のつくり方を教えていただきましょう。用意するスパイスは、カルダモン、クローブ、シナモン、あればブラックペッパー、フェンネル、そして生の生姜かジンジャーパウダーを加えれば、より複雑で重厚なハーモニーが楽しめます。

スパイスチャイ作り方

カルダモンの清涼感、クローブの芳香と舌がしびれるような刺激、シナモン&フェンネルのエキゾチックな甘味、ブラックペッパーのピリッと個性的な香りが濃厚なミルクティーと複雑なハーモニーを奏でて、クセになるおいしさ! 「しっかり煮出して、水にスパイスの香りを移すのがポイント。使う茶葉はミルクの風味に負けないアッサムがおすすめ。アッサムティーの半量をほうじ茶にすると、また風味が変わって楽しいですよ」

ホットはもちろん、春夏はアイスでも

RECOMMENDED ITEM!

スパイスレコメンドアイテム

SELECT100 計量スプーン5本組/貝印株式会社 ¥2,420(税込)

中本さんがスパイスの計量用に10年以上愛用しているのが「貝印」のSELECT100シリーズの計量スプーン。「5種の大きさがワンセットになっていて、特に小さじ1/4はスケールでは量りにくい少量のスパイスが正確に計量できるので重宝しています。テーブルに安定して置くことができるデザインなので、手に持たずに置いたままでも使えて便利!」。清潔で丈夫なステンレス素材で、コンパクトにスタッキング収納できるのも魅力。

HP:https://www.kai-group.com/products/brand/select100/products/dh3101.html

スパイスチャイのほか、ティータイムに気軽にスパイスを楽しみたいなら、煎茶や紅茶に好きなスパイスを加えてお湯で抽出するだけでも、いつもとは違う新感覚の味わいが楽しめるそう。「スパイスの香りがよく立ってほっと癒やされます。合わせるお茶菓子も、市販のチーズケーキにカルダモンパウダーをかけたり、ガトーショコラにシナモンやブラックペッパーをふったり、スパイスをちょい足しして冒険してみると、日常のおやつタイムにぐっと刺激や彩りが生まれますよ」と中本さん。

いつもの味にひとふりするだけで未知の感動をもたらしてくれる「スパイスの魔法」、今日からあなたも試してみませんか?

スパイスティー

Profile

中本千尋
フードデザイナー

大阪出身。フレンチレストランや料理教室、短大の調理師学科のアシスタント講師などを経て独立。間借りのスパイスカレー店を営んだ後、現在は食から日々の暮らしを提案する「Dish(es)」主宰として、ケータリング、ワークショップ、フードコンサルティング、レシピ・商品開発や動画配信などを積極的におこなう。スパイス料理を得意とし、スパイスの魅力を伝える「Dish(es)Curry」としても活動。

 

Instagram:https://www.instagram.com/chihiro_nakamoto/

取材・文/井口啓子 編集/乾 純子(Roaster) 撮影/藤井由依

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