「メイクはファッションの一部っていう感覚だとすごくいいと思います」。そう語るのは、コスメブランド「Celvoke(セルヴォーク)」のディレクターを務める田上陽子さん。「顔だけで完結するのではなくて、このお洋服を着るからリップはこの色にしようかなと、ファッションの一部のように考えると楽しいし、使ったことがないカラーも取り入れてみようかなという気分になる気がします。メイクをしなきゃ!ではなくて、アクセサリーをつけるような感覚で」。そんな田上さんの“完璧を目指さない”メイクマインドに倣って、旬の華やかなカラーを取り入れたメイクを楽しんでみませんか?
- 鮮やかでパワフルなカラーコスメが旬
- “完璧にしない”くらいがちょうどいい
- 「隠す・作る」ではない。個性を引き出すメイク
- 色のポイントづかいで、もっと自分らしく
鮮やかでパワフルなカラーコスメが旬
「時代の流れもあると思うんですが、おしゃれに対する欲求が戻ってきていて、ファッションやメイクでテンションを上げたいムードが盛り上がってきていると思います」。最近の鮮やかでパワフルなカラーコスメへの需要を田上さんはそう説明します。
「商品のカラーは基本的に発売の1年以上前から決めていきます。ファッションのトレンドなども意識して考えます。マスクをする時代になり、アイメイクが強調されるようになったこともあって、目元に鮮やかなカラーを入れたいと思っている人が今増えているようです。2021秋冬のCelvokeのラインナップも鮮やかな色が多いです」
“完璧にしない”くらいがちょうどいい
鮮やかなカラーが旬とはいえ、ふだんのメイクとして取り入れるにはハードルが高いし、どう使ったらいいかわからないと思う人も多いはず。ですが、「完璧じゃないメイクがむしろ今はおしゃれ」と田上さん。
「ふだんづかいは難しいと思うカラーでも楽しく取り入れるコツをお教えしますね。例えば、水色のアイライナーをワンポイントで入れてお洋服とリンクさせてみる。それくらいのラフな取り入れ方でもけっこう楽しいですよ。最近、“イエベ・ブルベ”といった肌の色や髪の色を気にして、似合わないからと挑戦できない人が多いんですが、完璧に似合うものとか、完璧なやり方なんて探さなくていいんです。逆にラフにメイクした方がこなれた感じが出る。アイシャドウはチップが付いているものが多いですが、指で塗れるアイテムがほとんどなので、指でラフにまぶたに塗っちゃう、くらいの感じがおしゃれだったりします」
メイクが苦手というコンプレックスが、むしろ今っぽいメイクのヒントになるのだそう。「アイシャドウを塗ったらマスカラをしないとか、チークは控えるとか、どこかを“抜いて”メイクするのがおすすめです。だから、全部完璧に塗らなきゃ!って思わなくていい。『Celvoke』ではその抜け感こそ大事にしているので、鮮やかな色のアイテムでも気軽に取り入れてもらえたらと思います。アイシャドウがなじんで、メイクが少し落ちてきたくらいがむしろちょうどいいと思っています」
「隠す・作る」ではない。個性を引き出すメイク
現在コスメブランドのディレクターを務めている田上さんですが、実は、以前はメイクに対してネガティブな感情をもっていたそう。おもしろいことに、その感情がブランドの立ち上げにつながったといいます。
「昔はメイクに対して、隠すとか作るというイメージが強かったので、なるべくメイクをしないできれいになる方が好きだったんです。『Celvoke』を立ち上げた理由も、百貨店のコスメや濃いメイクが苦手で、もっとオーガニックでナチュラルなメイクをしたいと思ったことがきっかけでした。オーガニックカルチャーの進んでいる海外では、ふだんはしないけど、出かけるときにだけさらっとメイクするという感覚はよくあることなんですが、日本では当時まだ、毎日しっかりメイクしなきゃ!という意識の人の方が多かった。だから、濃いメイクはやめようっていうより、なるべく質のいい成分でファッショナブルな、時代の先を行くコスメブランドを作る方がいいと思ったんです」
ブランド立ち上げ時は「隠す」「作る」というイメージだったメイクも、今は「自分の個性やスタイルを引き出してくれるものだと思っている」と田上さん。だからこそ、完璧に似合うメイクや正しいやり方を探す必要はなく、気分が上がるアクセサリーを身につける感覚で旬のカラーメイクを楽しんでほしいといいます。
色のポイントづかいで、もっと自分らしく
服やアクセサリーを身につける感覚で、鮮やかなカラーを取り入れるという田上さんに、おすすめのカラーコスメの使い方を教えてもらいました。「2021秋冬のCelvokeはテーマが“氷河期”で、浄化・リセットをキーワードにしています。一回全てをリセットする感覚で目元をクリアにしていこうというコンセプトで、秋冬には珍しいブルーなど寒色系の色を使っています。寒い季節はブラウンやボルドーを選びがちですが、あえて冷たい色を選ぶのが今新鮮です。ブルーは苦手意識がある方も多いと思うんですけど、全体というより、ポイントで使うとインパクトがあって、今っぽい目元に仕上がりますよ」
Celvokeのアイシャドウパレットを使った、この日の田上さんのアイメイクもさりげないのにカラフル。いろんな色を少しずつ目元に使えば、鮮やかなカラーでも肌になじむようです。
「冬はお洋服の色が暗くなりがちで重たくなるので、目元に明るい色を取り入れてみてください。今日は目の下にブルーのラインを入れているのですが、これを入れるのと入れないのとでは全然印象が違います。黒目の下だけにちょっと入れるだけでも印象が変わります。90年代は、ここに白を入れるのがはやっていたのですが、今は白目をクリアに見せてくれるブルーがおすすめです」。自分の気分が上がるカラーを目尻にちょっとだけ、目の下にちょっとだけ、その日の気分でラフにのせる。そういう気軽な使い方がおしゃれなメイクのコツのようです。
コロナ禍の憂鬱(ゆううつ)な気分に対抗するかのように、今多くの女性が求めているカラフルでハッピーなメイク。似合わないかも、難しいかも……と気負わずに、ラフな気持ちで試してみてください。
Profile
田上陽子
「Celvoke」ディレクターPR会社に勤務し、数多くの美容系クライアントを担当した後、2016年より「Celvoke」のディレクターを務める。現在、オーガニックビューティーブランド「エッフェ オーガニック」と2つのブランドディレクターとして活動するほか、フリーランスとしてディレクションや企画の仕事を担当している。
Instagram: https://www.instagram.com/yokotagami628/
取材・文/小曽根瑚々(Roaster) 撮影/三佐和隆士
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