日本に計7万以上もあるといわれるお寺。厳かな雰囲気で気軽には行きづらいイメージがあるかもしれないけれど、近頃は御朱印ブームなどの影響もあってか、若い世代でも訪れる人が多くなりました。
アイドルとして活躍する和田彩花さんも、ふだんからお寺を巡っているそうですが、彼女が訪れるようになったきっかけは「仏像」。「仏様のお顔を見ているとホッと心が落ち着きますし、私にとってお寺にお参りすることは、実家に帰るような感覚なんです」と話します。
「お寺は、実はすごく身近で楽しい場所」と和田さん。いつも何気なく通り過ぎていたお寺に目を向けてみると、自分にとって最高のパワースポットになるかもしれません。
- ビビッとくる何かが、お寺ではきっと見つかる
- 落ち着くお寺を見つけて、心の故郷に
- 仏像を知ることは、お寺を知ること
- 授与品にも注目すれば、楽しみ方がもっと見えてくる!
ビビッとくる何かが、お寺ではきっと見つかる
今回は、和田さんが1年を通して一番足を運ぶという東京都文京区の「護国寺」へ。1681(天和元)年に江戸幕府の第五代将軍・徳川綱吉によって創建された、都内屈指の歴史を誇る寺院です。「私の場合は仏像ですが、何かしらの癒やされるポイントや夢中になれるものを見つけると、お寺そのものに愛着が湧いてくるはず!」と和田さんは話します。
こちらの本堂には、仏像ファンの和田さんが特に大好きな仏様が安置されているのだとか。まずは彼女が仏像の世界にハマり、さまざまなお寺を巡るようになったきっかけを聞きながら、本堂へと向かいます。
和田さんが仏像をきっかけにお寺を巡るようになったのは、高校生の頃。そもそもなぜ、仏像の世界に魅せられたのでしょうか?
「もともと西洋美術を勉強していたんですが、日本の美術についてもきちんと知りたいと思ったときに、高校の先生から仏像の存在を教えてもらったんです」
はじめは、仏像の名前とイラストを描いたオリジナルの単語帳を作って学んでいったそう。「顔の見分けもつかないし、名前の漢字も難しくて読めなくて。でも毎日単語帳を眺めていたら、だんだんと仏像によって顔がまったく違うことがわかってきたんですよ! それを機に仏像ごとの役割やそれに伴う見た目の違いにも興味が湧いて、仏像の世界に引き込まれていきました」
そして大学受験が終わった頃には、いろんな仏像を拝観するべく、母親と一緒に鎌倉や京都・奈良などから仏像巡りをスタートしたそう。
「私にとってのお寺はホームのような感覚だけれど、人によっては本堂で過ごす時間自体がリラクゼーションになるかもしれないし、おみくじなどをエンタメとして楽しむ場所になるかもしれない。それぞれにビビッとくる何かが、お寺ではきっと見つかります」
落ち着くお寺を見つけて、心の故郷に
「居心地が良いと感じるお寺を見つけて、心のよりどころにしてほしい」と話す和田さん。彼女にとってここ護国寺は「もう一つの心の故郷」。そうした場所を一つもつことで「心身の健康度がまったく違う」といいます。
「一人暮らしをしていると特に、家はリラックスするというより、帰るだけの場所になりがち。そんなときに相性のいいお寺を知っていると心の支えになるはずです。皆さんも近所にある身近なお寺に立ち寄ってみると、思いのほか気持ちが安らいだり、自分好みの仏像や建築に出合えたりと、心の癒やしにつながるんじゃないかな」
15歳でメジャーデビューしてしばらくは、実家がある群馬から都内の仕事先に通っていた和田さん。アイドルになってからは、よりお寺の存在が心強かったそう。「がらっと環境が変わって、疲れやプレッシャーがたまった時期がありました。そんなときもよく、心を落ち着かせるために地元のお寺へお参りに行っていました」
その後、大学入学と同時に上京。「上京直後はよく池袋のサンシャインシティで舞台に出演していたのですが、そこから近いということもあり護国寺を知って。緊張したり精神的にきついときは、公演前にもよく来ていました」
「お寺って来るたびに発見があるから、同じところに何度行っても飽きないんですよ」と和田さん。「仏像や建築は時間や天気によって見え方が違うし、御朱印だって書く人によって雰囲気が違ったり。緑豊かなところも多いから、都会の真ん中で気持ちいい空気を吸いたいときにもぴったりですよね」
仏像を知ることは、お寺を知ること
そんな和田さんがすすめるお寺の楽しみ方は、“仏像を通してお寺を知ること“。お寺には御本尊をはじめ、大仏やお地蔵様などさまざまな仏像が安置されていますが、大きく分けて如来・菩薩・明王・天の4種類があり、姿や装飾も違って個性豊か。
「それぞれに役割や特徴があるんです。如来は悟りを開いているので、物欲がなく装飾品が少なかったり、菩薩は悟りを開ききれていないから、姿も人間に近い。なので物欲があって、ブレスレットやネックレスなどの装飾品を身にまとっているからビジュアルも華やかなんです」
中でも和田さんは、穏やかな表情の菩薩が好きで、護国寺の御本尊である「如意輪観世音菩薩(にょいりん かんぜおん ぼさつ)」をきっかけに、お寺自体に興味をもつようになったそう。「如意輪観世音菩薩の、6本の手をもつ独特のたたずまいや、美しい装飾には目を見張ります。もともと護国寺自体の歴史にはあまり詳しくなかったのですが、仏像の成り立ちを通して、安置されている寺院の歴史を理解していったんです」
如意輪観世音菩薩は、護国寺の建立を命じた徳川綱吉公と、その生母である桂昌院(けいしょういん)が親子で親しみ、参拝していた仏像。そこからお寺の歴史をひもとくと……「このお寺が桂昌院のために建てられたことや、本堂は関東大震災や空襲を逃れていて、今でも創建当時の姿を保っている貴重な建物だということも知って。仏像について調べるうちに、どんどんお寺に関する知識が深まっていきました」
また、先人たちに思いを馳せる時間も好きだといいます。「綱吉公や桂昌院が参拝していた仏像を、今はたくさんの人が拝観している。彼らはどんな気持ちでこの仏像と接していたんだろう? 違う時代を生きる自分とはまた違うのかな?などと、想像するだけでわくわくします。それは、お寺で拝観する仏像ならではの味わい深さだと思う」
「気に入った仏像の歴史をたどってみるとお寺自体の歴史にもつながってきて、どんどんおもしろくなりますよ! お寺へお参りに行くのはハードルが高いと感じていても『好きな仏像に会いに行こう』という感覚で訪れてみると、もっと気楽かつ身近な場所になると思います」
授与品にも注目すれば、楽しみ方がもっと見えてくる!
和田さんの場合は仏像でしたが、そのほかにも、お寺巡りを楽しむきっかけはいろいろ。「本堂などの歴史的建造物を極めたり、御朱印やおみくじといった授与品をお目当てにするなど、“ハマる入り口”が多いのもお寺のいいところ。
特に御朱印は、見返したときにその日の情景が浮かぶ楽しさもありますよね。私も御朱印帳をもっている日はいただくようにしているんですが、したためる様子を眺める時間も好きなんです。書く人によって文字に個性があるので、同じお寺に通っていても毎回いただくのがおすすめ」
「気に入った仏像の御朱印をいただくと、お守りのような安心感もあります」とにっこり。「お参りして御朱印をいただいたあとは、おみくじを引いてそのときの運気をはかったり、絵馬をお受けして祈願したりすることもあります。私は一人で訪れることがほとんどですが、友達と来てもきっと盛り上がりますよ」
「地元が恋しくなっても、ストレスを感じても “帰る場所”があれば心が安らぐ」。学生時代から親しみ深かったお寺は、大人になるにつれ、癒やしだけではなく好奇心をも刺激してくれる場所になりました。
「お寺での体験は心の栄養になるし、きっとその存在自体が日常生活の支えになります。皆さんにも、すてきなお寺との出合いがありますように!」
Profile
和田彩花
アイドル・女優2009年にアイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出され、翌年にメジャーデビュー。2019年に卒業してからはアイドル活動を続けるとともに、大学で学んだ西洋近代美術史の知見をいかし、アプリ版ぴあでの連載「和田彩花の『アートに夢中!』」など美術関係のメディアでも活躍する。趣味はお寺巡りで、芸能界きっての仏像マニアとしても名高い。
Twitter:https://twitter.com/ayakawada
取材・文/金城和子 編集/柳瀬 礼(Roaster) 撮影/藤井由依(Roaster)
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