テーブルコーディネートとは、料理をおいしく演出し、食空間をトータルで彩ること。
フード・空間スタイリストの赤埴(あかはに)奈津子さんにとっては“いつものおうち時間の食事をちょっとスペシャルに変えてくれるもの”なのだそう。
響きだけ聞くと格式が高そうでついちゅうちょしてしまいますが、友人とのランチや週末にのんびり食事を取りたいとき、がんばりすぎずにおうちにあるアイテムで仕上げるだけでも素敵な空間を作れることが醍醐味(だいごみ)なのだと教えてくれました。
いつもとは少し違う、スタイリングされた食卓を囲めばみんなの気持ちも盛り上がり、思い出に残る素敵なひとときを過ごせそう。
赤埴さんのレクチャーで、気軽に始められるテーブルコーディネート術を学んでみませんか?
- いつもの食事がスペシャルに! ちょっとの工夫で食空間は変わる
- 手もちの道具の使い方を変えるだけでテーブルはレベルアップ
- 食事をするのが待ち遠しくなるアイテムの選び方
- 一緒に作り上げる体験で楽しい時間を特別な思い出に
いつもの食事がスペシャルに! ちょっとの工夫で食空間は変わる
「20代のとき、長年憧れていたフランスへ短期留学した際に現地の友人宅へランチに招待された経験が、テーブルコーディネートの魅力に気づくきっかけになりました」
と語る赤埴さん。部屋に入ると、テーブルの上に食器が美しくセッティングされているのを見て、とても驚いたそう。
「思わず、“パーティなの?”と聞いてしまったのですが、友人は“せっかく家に来てくれるのだから、ちょっと工夫してみただけだよ”と、ごく当たり前のことのように話すんです。食器をコーディネートしていたり、手書きのネームプレートを置いてくれるだけで、おもてなしされているんだという、うれしい気持ちに包まれました」
用意されていたのは素朴な家庭料理だったそうですが、何か特別なものをいただいているような感覚になれたといいます。
大切な人とのひとときを癒やしの時間にするため、ちょっとの工夫と気遣いを忘れないフランスの文化。身をもってそれを実感した赤埴さんは、日本に帰ってきてからも料理の盛り付けやテーブルを飾ることを気負わず、気楽に行うようになったのだとか。
とはいえ、忙しいときや自分のためだけにテーブルコーディネートを用意するのは正直大変ですよね。そんなときは、お皿をトレイに載せるだけでも食卓は豊かに。
「たったそれだけでも充実した1日を過ごせたな、というポジティブな気分になれるのもテーブルコーディネートのすばらしさだと思います」
手もちの道具の使い方を変えるだけでテーブルはレベルアップ
いざ友人とランチ会をするなら、まずは何から始めればいい?
おうちで楽しむテーブルコーディネートは、盛りすぎてもリラックスできないし、シンプルすぎても寂しいもの。居心地の良さを感じる、ほどよい彩りにすることがポイントです。だから「ふさわしいアイテムをもっていない」と心配する必要もナシ。
私たちがやりがちなテーブルコーディネート(Before)を赤埴さんのアイデアで素敵にお直し(After)してもらいながら、最低限のアイテムで見せ方を変え、料理をおいしく演出するコツを伝授していただきました。
(Before)やりがちなテーブルコーディネート
ランチョンマットを敷いてみたものの、サンドイッチとスープを置いただけで、ふだんとあまり代わり映えのしないテーブル。全体的にのっぺりしていて隙間も多いため、殺風景な印象です。せっかくのお料理もあまりおいしそうに見えません。
(After)赤埴さんがお直ししたテーブルコーディネート
オープンサンドは中央に高く具材を載せることで、立体感が出て食欲が湧く盛り付けに。バスケットとカッティングボードでスペースを区切ることでメリハリも生まれ、盛りだくさんなテーブルに変身しました。
赤埴さん直伝! 素敵に見せるひと工夫アイデア
(After)のような仕上がりにするには、どんな工夫をしたらいいのでしょうか? おうちにあるものやすぐに購入できるアイテムで簡単に取り入れられる3つのポイントを教えていただきました。
(1)ランチョンマットはきれいに敷かない
布をくしゃっと中央に寄せ、その上からお皿を置く。「布ってピシッときれいに置きたくなるのですが、そうするとテーブルにあるもの全てがきちんと規則的に置かれていないと、浮いて見えてしまうんです。でも、それだと作り込みすぎていて緊張するし、ちょっと崩してある方がおいしそうな雰囲気も出てバランスよくまとまると思います」
(2)テーマカラーを決める
白やくすみカラーをベースに、料理で2、3色加えてアクセントを。「メインカラーを意識してコーディネートすると統一感が出ますし、お皿の食材がより際立ち、美しく見えるんです」。ヴィヴィッドな色も使いたくなるけれど、落ち着いた色みを軸にする方が料理との親和性も高まるのだそう。
(3)食器を重ねる
スープボウルの下に平皿を重ねると、なんだか上品なムードに。「フランス人の友人の家へ遊びに行ったとき、このようにお皿をレイヤードしているのを見て、ランチへのモチベーションが上がりました。テーブルに立体感と奥行きが出るので、ぜひ取り入れてみてほしいです」
大掛かりなことをするのはちょっと大変、と思う日でも、これくらいのひと工夫なら気負うことなく準備できそう。大好きな人と囲むテーブルは、笑顔が咲く場所。そんなスペースを自由にスタイリングできたら、癒やしの時間と空間を自分ですぐに作れるようになり、日々の充実度も確実に上がってくるはず。
食事をするのが待ち遠しくなるアイテムの選び方
テーブルコーディネートに必要なものをそろえるとき、押さえてほしいポイントについても赤埴さんからアドバイス。たくさんの道具がなくても、これさえあれば見栄えのするテーブルが作れるという基本アイテムについて教えてくれました。
「まずはカトラリーを準備。色はシルバーが一番使いやすく、スタイリングの幅が広がります。華美になりすぎず、ナチュラルなテーブルコーディネートによく合いますよ」
カトラリーや食器は2セット、できれば4セット用意しておくと安心ですが、一人暮らしの場合、それがなかなか難しいというケースも多いはず。
「私は、のみの市などに好みのお皿を見つけに行くのが好きなのですが、ヴィンテージのものなら、バラバラに組み合わせても不思議とまとまりが出ます。同じものをいくつも用意できない場合は、色だけシルバーに統一して、古いものから愛着が湧くアイテムを探してみるのもよいかもしれません」
布もマストで用意しておきたいアイテムです。
「柔らかくて、シワになりにくい素材を選ぶように意識してみて。よくある四角い形のランチョンマットよりも、無印良品やIKEAで手に入るようなキッチンクロスがおすすめ。お皿の下に敷いたり、畳んでカトラリー載せにしたり、さまざまな使い方ができるので便利ですよ」
一緒に作り上げる体験で楽しい時間を特別な思い出に
テーブルコーディネートが楽しくなれば、食事に“招く・招かれる”という機会も増えるもの。お互いの家でテーブルを囲むようになると、今まで知らなかった相手の一面が見えてくることも、食空間を彩るうえでのうれしい発見だったと赤埴さんは語ります。
「テーブルコーディネートや料理の盛り付けを一緒に作り上げていく作業の中で、 “こんなところがあるんだ”という相手の新たな魅力に気づくことができるんです。同じ食材を使っても、盛り付けすると全然違うものができあがっている。それぞれの個性があふれる瞬間にふれることも楽しくておもしろいんです。それは外食ではなかなか見えてこないもの。大人になって一緒に作る・体験するという時間を分け合えることは思い出にも残りやすいと思います」
盛り付けのお皿を一緒に選んだり、それぞれのアイデアをもち寄ってスタイリングを相談したり、食事するまでの過程も温かなふれあいの時間に。
そうして過ごした食事の時間を思い出すと仕事が忙しいときにもパワーをもらえて、またあの楽しい時間を過ごせるように、と希望に燃えることも多いのだそう。
大切な人たちとテーブルを囲むことは互いを元気づけ、相手を思う気持ちを分け合う癒やしのひととき。当たり前すぎておろそかになりがちなこの時間を、テーブルコーディネートで特別な思い出に変えてみませんか?
Profile
赤埴奈津子
フード・空間コーディネーター美容部員を経験した後、2012年に南フランスに留学。フランスの食文化に魅了される。帰国後にもワーキングホリデーを活用して2度目の渡仏を経験。2016年からはフード・空間コーディネーターとしての活動を開始。ナチュラルなテーブルコーディネートを得意とし、レシピ開発なども行う。インフルエンサーとしても人気を集め、食や美容、ファッションなどの分野で磨かれたセンスが注目されている。
取材・文/渡辺愛 編集/本間綾乃(Roaster) 撮影/栗田真帆
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