「盆栽」は、大木の姿を鉢の上にミニチュアサイズで再現して自然の風景をつくり出す、日本の伝統文化。ミニマルで洗練されたたたずまいから、海外でも「BONSAI」として愛されています。最近では日本でもおしゃれな人の間でインテリアグリーンの一種として人気を集めていますが、お手入れが難しそうで手を出せずにいる人も多いはず。
そこで今回は盆栽愛好家として知られるSCANDAL ベーシストのTOMOMIさんに、盆栽の魅力と、現代の暮らしにフィットした楽しみ方を指南していただきました。
- 「手のひらサイズの小宇宙」をつくってめでる、盆栽の魅力
- スタイリッシュに盆栽を楽しむなら、ミニマルインテリアを合わせて
- 盆栽と触れ合う時間は、ほっと心安らぐ日々の癒やし
- ビギナーにおすすめ! スタイリッシュなミニ盆栽3選
「手のひらサイズの小宇宙」をつくってめでる、盆栽の魅力
もともと観葉植物が好きで、さまざまな植物を育てていたTOMOMIさん。盆栽にはまったのは今から4年前、友達にプレゼントされた盆栽がきっかけだったそう。
「それまで盆栽って、敷居が高くて手が出しづらいイメージがあったんですが、友達がくれた盆栽はハゼの木を苔(こけ)玉仕立てにしたもので、石皿の上にちょこんと置いてあり、かわいい!とときめいてしまいました。盆栽は自然の中にある大木の姿を鉢の上にミニチュアサイズで再現したものなので、木の幹ってこんなにウネウネしてるんだとか、枝はこんなふうに生えてるんだとか、大きいサイズでは気づけない木のおもしろさに気づけるんです」
苔が好きで、テラリウムにはまっていたこともあるというTOMOMIさんにとって、自分だけの小さな自然の風景をつくれるところも、盆栽にひかれた理由だと言います。
また盆栽は自然の木と同じように基本的に屋外で育てるため、季節によって表情が少しずつ変わっていくのも、観葉植物にはない魅力です。
「東京で慌ただしく過ごしていると自然や季節を感じることが難しいし、最近はどうしても家で過ごすことが多いので、ベランダの盆栽を通して小さな季節を感じられるのは、メンタルヘルスにすごくいいなと感じています」
「盆栽は自然の移ろいを如実に教えてくれる存在。また、お店の方から梔子の実は昔から染料に使われていて、栗きんとんに色を付けたり、洋服を染めたりもしていたと聞いて。盆栽には古くから日本人の暮らしの身近にあった木が使われているので、盆栽を通して、そういったストーリーを知ることができるのも楽しいです」
スタイリッシュに盆栽を楽しむなら、ミニマルインテリアを合わせて
お家では、基本的にベランダで盆栽を育てているというTOMOMIさん。
「キャンプも趣味なので、お気に入りのアウトドアテーブルとチェアを出して、コーヒーを飲みながら盆栽をめでるのが、 何よりの楽しみですね」
盆栽は、幹や枝のフォルムが個性的で、洗練されたアートオブジェのようなたたずまいもあるため、一時的に部屋に持ち込んで、インテリアとして楽しむこともあるそう。
「盆栽って、それ単体で見ると和っぽいのに、不思議と都会的なインテリアにもなじむんです。私の部屋も和テイストではないけれど、ちょこんとレコード棚の上に置いてもしっくりくるし、不思議な存在感がある。どんな部屋に置いてもサマになるオーラがあります」
器マニアでもあるTOMOMIさんは、お気に入りの作家物のお皿の上に盆栽を置いたり、湿地に見立てたスペースに陶器のカエルを置いたりして楽しんでいます。
「カエルはかわいらしすぎるかな?とも思ったんですけど、砥草(トクサ)がシャープでカッコイイ雰囲気なので、ちょうどいいバランスになりました。盆栽は自然のものなので、やっぱり木や土物の器と相性がいい気がします」
盆栽は自然の木を使ったものだけに、ほっこりナチュラルになりすぎないように、モノトーンでざらっとした質感の器をコーディネートするのが、スタイリッシュに楽しむコツのようです。
盆栽と触れ合う時間は、ほっと心安らぐ日々の癒やし
盆栽というと、管理が難しそうなイメージもありますが、実際はどうなのでしょう。
「盆栽は水をあげないと枯れてしまうので、水やりは基本的には1日1回、夏場は1日2回ぐらいあげた方がいいですね。その点では観葉植物より手はかかりますが、2、3日の留守なら鉢をひたひたに濡らしたティッシュで包んで、さらにビニール袋で包んでおけば大丈夫。長期ツアーの際は友達に預けていますが、それをきっかけに友達も盆栽に興味をもってくれて、盆栽を通した輪がどんどん広がっています」
鉢の上に好きな風景をつくってめでることから、最近は箱庭療法の観点からも注目されているという盆栽。「苔をあしらって小石を敷いたりして、素敵な風景ができたらうれしいし、疲れた日も眺めるとほっと癒やされるんです」
毎日お水をやりながらその姿をめでて、季節によって変わるその姿を楽しむことが、TOMOMIさん流の盆栽の育て方であり、多忙な日々のセラピーでもあるのです。
ビギナーにおすすめ! スタイリッシュなミニ盆栽3選
初心者がまず最初に選ぶなら、どんなタイプの盆栽がよいのでしょう。
「定番の松とかもかっこいいけれど、ファースト盆栽なら花が咲いたり、紅葉したり、わかりやすく変化や成長が楽しめるものがいいと思います。サイズ的には小さめの方が部屋に持ち込めるし、旅行などで留守にするときも友達のところに持っていって預けやすいのでおすすめです」
もともとベランダでハーブなどを育てていたというTOMOMIさんですが、盆栽にはまってさらにベランダで過ごす時間が増えたこと以外に、盆栽を主役に食卓をコーディネートする楽しみも増えたといいます。
「もともと器好きで料理も好きなので、テーブルの上に盆栽を置いて、季節の食材で器や盆栽に合う料理を作っています。これはこの器に盛ろうとか考えながら、仕上げに盆栽の葉っぱを飾ったり。テーブルの上で季節を感じられるこういう過ごし方が本当のぜいたくだなあって。春になって富士桜が咲いたら、大好きな和菓子屋さんのわらび餅を買ってきて、お抹茶をたててお花見をしようと今からワクワクしてます」
都会のマンションにドラマチックな四季の訪れを伝えてくれる、盆栽生活をこの春から始めてみませんか?
Profile
TOMOMI
ミュージシャン/SCANDAL ベーシスト兵庫県出身。2006年に大阪にてSCANDALを結成。2008年にメジャーデビューし、「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞する。2012年には日本武道館公演を成功させ、2015年には世界9ヵ国41公演のワールドツアーを大盛況に収めるなど、日本を代表するガールズバンドとしての地位を確立。自然を愛し、園芸、ドライブ、キャンプ、器集め、料理を自由に楽しむ暮らしぶりにもファンが多い。
取材・文/井口啓子 編集/本間綾乃(Roaster) 撮影/藤井由依
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