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K-POP、韓ドラの次はコレ! 初めての人のための 韓国文学「K文学」入門

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ストレートな感情表現に 心を揺さぶられる。 それがK文学の魅力

日本でブームとなっている韓国文学「K文学」(以下、K文学)。モデル・前田エマさんはその魅力を「今まで向き合ってこなかった社会問題や歴史に触れられること」や「真摯で真っ直ぐな感情の表現に心が揺さぶられるところ」と語ります。そんなK文学の世界を上手に楽しむためには? 初めての人でも読みやすいおすすめの本や、本の選び方などをうかがいました。

  1. K文学、今なぜブームなの?
  2. 映画化された作品も! 前田エマさん推薦のK文学4冊
  3. 初めてのK文学を楽しむコツ! 本の選び方は?
  4. K文学というカルチャーを通して対話ができる

K文学、今なぜブームなの?

「ふらっと本屋さんに入っても、韓国文学のコーナーを普通に目にするようになりましたよね」と語る前田さん。そのブームの裏側、きっかけは日本で2018年に出版された『82年生まれ、キム・ジヨン』(韓国では2016年)。韓国映画『パラサイト』やBTSの世界的な活躍により、「韓国のエンタメってすごいよね」という空気がより加速し、K文学のブームを後押ししたとされています。

笑顔の前田さん

日本で受け入れられているのはどうしてなのか。前田さんに意見を聞いてみると「韓国文学を読んでいると、悲しみや怒りが温度を持って伝わってくる。空気を読む文化や、遠回しに表現することが尊重される日本では、もしかしたら新鮮に映るのかもしれません。そして社会問題や歴史的な事柄を物語に入れることも魅力のひとつだと思っています」という答えが返ってきました。

「“こんなに怒っていいんだ”とか“心の痛みを真正面から叫んでいいんだ”とか、心の中にある感情にちゃんと向き合って大切にしていいのだと感じられる。そんなところが好きです」

前田さん自身はBTSのファン。BTSの楽曲の中で「光州民主化運動」に関する歌詞があり、そこに関心をもったのが始まり。友達にすすめられて「光州民主化運動」を題材にした『少年が来る』という1冊の本に出合います。それがK文学にのめり込むきっかけとなりました。

前田さん

文章の新鮮さと自分が知らなかった韓国の歴史、社会的な問題に興味をもった前田さん。「今まで他人事だった世の中で起きている問題が、文学を通すとパァーっと色を持ち始めたんです。その体験が衝撃的でした。知れば知るほど、自分が無知だということがわかる。無知な自分を受け入れることが、なんだか楽しかったんです。そうして、自分なりに社会の問題と対峙(たいじ)していく方法を模索したくなったんです」

映画化された作品も! 前田エマさん推薦のK文学4冊

K文学にハマってからまだ1年と少し。それでもすでに40冊以上の本を読んでいる前田さんに推薦図書をご紹介いただきました。「これまであまり本を読む習慣がなかった人でも、読みやすいものを」というリクエストのもと、計4冊をピックアップ。

(1)映画化された2作品!『菜食主義者』と『82年生まれ、キム・ジヨン』

菜食主義者

『菜食主義者』の著者ハン・ガンさんは前田さんも大好きな韓国を代表する現代作家のひとり。「突拍子もない話と感じる人もいるかもしれません。でも誰もが心当たりがあるような自分の心の傷や体で感じる痛みについて描かれています。人間として生まれ生きるとは何かを突きつけられます」

冒頭でも紹介した『82年生まれ、キム・ジヨン』。「この作品が世界中で注目されたのは、きっと世の中の女性が年齢や国籍関係なく“自分のことかもしれない”と共感できる部分があったからだと思います。小説は韓国の国の歴史や制度について、注釈付きで描かれているので“韓国を知る”という意味でもとても役立つ1冊ですね」

(2)女性が生きる大変さを女性アーティストが描くエッセイ『話し足りなかった日』

話し足りなかった日

生きていくということは、本当にいろんなことがある。そのひとつひとつに一生懸命向き合い綴り続けるエッセイ。「人は誰しも複雑で豊かな感情をもって生きているし、それはとても大事なこと。他人から見たら常識を疑われるような感情でも、それは宝物です。そして、それを存分に書いても許されるのが文学の世界」だと、語る前田さん。

「作中でも、作者のイ・ランさんは“今傷ついている”、“お金がない”とか、自分の状況や感情を包み隠さない。その姿に覚悟を感じます。描かれていることは大変なことが多いのに、読んでいるとなんだか元気が出てきて、思わず笑ってしまうんですよね」

(3)女性同士の繊細な“あるある”を表現!『ショウコの微笑』

ショウコの微笑

『ショウコの微笑』は7つの短編小説からなり、タイトルになっている「ショウコの微笑」がいちばん読みやすくておすすめのお話なのだそう。

「“大人になるってはかなくて切ないな”と何度も読んだ作品です。2人の女の子が成長していくにつれ、だんだんと疎遠になり心も離れていってしまう話。昔仲が良かった友達とけんかしたわけでもないのに、いつのまにか距離ができていくことってよくあるじゃないですか。言葉で言わなくてもあんなに心で繋がっていると思っていたのに……と。大人であれば、その寂しさに共感できるのではないかと思います」

初めてのK文学を楽しむコツ! 本の選び方は?

本の前でたたずむ前田さん

これからK文学にふれてみたい。でも本はどうやって選べばいいの?という人も多いはず。そんな人に向けて、初心者でも入りやすい「おすすめの本の選び方」を前田さんに教えていただきました。ポイントは3つ。

(1)K-POPアーティストのレコメンドから入る
「私自身がBTSをきっかけにK文学の世界に入っていますが、自分が読んだ小説や詩集をSNSなどで紹介しているK-POPアーティストはたくさんいます。K-POPが好きな人であれば、そこから入ってもおもしろいかも」

K文学を選ぶ前田さん

(2)ジャケ買いもあり
「K文学の本って、装丁がかわいいものが多いんですよね。私は神保町にあるK文学の専門書店「チェッコリ」に足を運ぶことが多いのですが、おしゃれなデザインの本がずらりと並んでいます。そこから見た目にビビッっときたものを買ってみるのもアリだと思います」

(3)翻訳者の人のおすすめをチェック
「少しマニアックかもしれないですが、K文学の翻訳者の方のレコメンドもおすすめ。SNSでご自身の意見を積極的に発信している翻訳家の方が多いんですよ。ご自身が翻訳されていない本についても熱く感想を語っていたり(笑)。私もよくチェックしています」

【前田さんの読書のお供】

前田さんお気に入りグッズ

ハーブティーを飲んで心を落ち着かせてから読書をすることが多いという前田さん。「移動時間や机に向かって集中して読むときもあるけれど、ベッドでごろごろしながら読むことも多いです。寝ているのか本を読んでいるのかが曖昧なくらい、リラックスしている読書時間が幸せです」

RECOMMENDED ITEM!

すべての、白いものたちの

『すべての、白いものたちの』ハン・ガン著、斎藤真理子訳、河出書房新社刊  ¥2,200(税込)

もともとは図書館で借りて読んだ本でしたが、表紙のかわいさや本全体のデザイン性に引かれて、購入した1冊。「白がテーマになった本なのですが、ページに数種類の白い紙が使われていたり、モノクロの写真がおしゃれだったり。まるで画集を読んでいるみたいな感覚になります。プロダクトとしても気に入っています」

HP:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309207605/

K文学というカルチャーを通して対話ができる

K文学を読む前田さん

K文学の日本でのブーム。「この流れを私自身は長く大切にしたい」と語る前田さん。

「日本と韓国の関係は、これまでのいろいろな歴史を経て今に至ります。社会的な問題も多く抱えているけれど、カルチャーという好きなものを通して、いろんな人たちと対話できるというのはすごく希望があることだと思うんです。だから、こうやって文化や歴史にも興味を持つ人が増えたらいいなと思うし、いろんな人が“自分の好きなこと”を語れる世界であり続けることを願っています」

一度ハマるとどんどんのめり込んでしまう人が多いというK文学。もちろん、どこに魅了されていくかは人それぞれ。ぜひその一歩を踏み出してみてくださいね。

Profile

前田エマ
モデル

1992年、神奈川県生まれ。東京造形大学卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーに留学経験をもち、在学中から、モデル業、エッセイ執筆、写真、ペインティング、朗読など、さまざまな分野で活動。現在はラジオパーソナリティのほか、エッセイの連載を多数手がけ、Webマガジン「クオンの本のたね」にて、「韓国文学と、私。」を連載中。

Instagram:https://www.instagram.com/emma_maeda/

ワンピース¥57,200(税込)/FOR flowers of romance
●お問い合わせ:https://for-lafleur.katalok.ooo/ja

取材・文/坂本アヤノ 撮影/藤井由依(Roaster)

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