暑い季節につい見たくなるのは、スリル満点のミステリー映画。ラスト数十分で想像もつかなかった衝撃のどんでん返しが起きるストーリーも多く、つい人に話したくなってしまうジャンルです。1日1映画が習慣になっているというカルチャー系インフルエンサーyokopiさんも、ミステリー映画にハマっているひとり。
「ミステリーって見終わった後に『え、この人が犯人なの⁉︎』ってびっくりすることが多くて、すぐにネットでどこに伏線があったのか調べるんですけど、調べた後にもう1回見直したくなるんです。犯人がわかっていても『いったいどこが怪しかったんだろう?』って確認しながら見るのがおもしろくて、2回でも3回でも楽しめます」
そんな独特の楽しさに魅了され、「今日はうまくいかなかったから、すっきりしたいな」という気分のときはミステリー映画を見るようになったというyokopiさん。ふだんはあまりこのジャンルを見ない人にもおすすめの、見るだけで心がすっきりして癒やされる4作品を教えてもらいました。
- ミステリーの登竜門。絶対見てほしい鉄板2作品『プレステージ』『ユージュアル・サスペクツ』
- 「結局、怖いのは人間……」深みにハマる2作品『ゴーン・ガール』 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』
- わからなさも、モヤモヤもおもしろい? ミステリーのマニアックな楽しみ方
- ミステリーこそ映画館で見たい。おすすめの最新施設「K2」
ミステリーの登竜門。絶対見てほしい鉄板2作品『プレステージ』『ユージュアル・サスペクツ』
まず最初に教えてもらったのは、ミステリー初心者さんにおすすめの定番作品。
「ミステリーにハマった初めの頃は、見て怖いなと思うこともあったかも。でも好きになると怖さはなくなります。寝る前に映画を見るのがルーティンになっているんですが、ミステリーを見たときはすっきりした気持ちで眠れる気がします」とyokopiさん。まずは、ここで紹介する定番作品でミステリーならではの爽快感を味わってみてはいかがでしょうか。
『プレステージ』(2006年)監督クリストファー・ノーラン
最初に紹介するのは、「人間の深層心理などをテーマにすることが多い、『メメント』や『テネット』で知られる監督クリストファー・ノーランの人気作品です。ノーラン監督の作品ってSFっぽい世界観のものが多いので、自分のリアルな生活とはかけ離れてるんですけど、それがすごく好きで癖になるんです。『プレステージ』は、最後まで絶対に見破れないトリックが描かれていて、ラストが本当に圧巻……! ミステリー好きだったら見ている定番の名作なので、まだ見たことがない方はぜひ見てほしいです」
「友達でありライバルでもある2人のマジシャンの話なんですが、ある日、片方のマジシャンの妻がマジックショーの出演中に事故で亡くなるんです。で、その責任をめぐって仲違いをしてしまい、ドロドロの人間模様が描かれるんですけど、話の後半で出てくる『瞬間移動マジック』というのが、すごく不気味なんです。2人が競い合いながらお互いマジックショーを続ける中で、片方が編み出したトリックなんですけど、映画の観客には最後までどうやって瞬間移動をしているのかがわからない。奥さんの死の真相と、瞬間移動のトリックがラストに明かされるんですけど、それがわかったときに本当にゾッとする作品です……」
『ユージュアル・サスペクツ』(1995年)監督ブライアン・シンガー
「これこそ、結末を知った後にもう一度見たくなる1本。アカデミー賞のオリジナル脚本賞など、多くの賞を受賞している名作クライム・ミステリーです。私は、書いて整理をしないとわからないような複雑な時系列のミステリーが好きなんですけど、『ユージュアル・サスペクツ』は現在と過去の回想シーンが入り混じって描かれている作品で、目が離せない展開がずっと続きます。今回紹介する4本の中で一番のTHEどんでん返しがあって、ラスト5分で全部ひっくり返される衝撃作!」
「ドラッグ犯罪と警察官の話なのですが、犯罪組織の黒幕としてカイザー・ソゼという謎の人物が語られるんですね。でも、このカイザー・ソゼが最後まで1回も出てこなくて、観客はその正体がわからないまま、ラストまでいっきに連れていかれるんです。絶対予想できないようなラストになっていて、真実がわかったときに心からスカッとする作品です」
「結局、怖いのは人間……」深みにハマる2作品『ゴーン・ガール』『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』
次に紹介してもらったのは、ミステリー玄人にもおすすめの2本。人間関係のドロドロや、「ああ、いい人だったのにどうして……」と思ってしまうような人間の裏側を巧妙に描いた作品です。
『ゴーン・ガール』(2014年)監督デヴィッド・フィンチャー
「『セブン』や『ファイト・クラブ』などの作品で有名なデヴィッド・フィンチャー監督の作品の中で、割と新しめの1本です。ミステリーって『結局一番怖いのは人間だな……』って思わせる作品が多いのですが、『ゴーン・ガール』はまさにそういう映画。これを見て、人間の本性を見極めることの大切さを学びました(笑)。ドロドロした人間関係が描かれているのに楽しく見られる1本です」
「幸せな夫婦の妻が突然姿を消してしまい、警察は夫に疑いをかけるんです。観客は絶対に夫が怪しい、と思いながら見るんですけど、途中から描写の視点が妻側に変わって、まったく予想していなかった展開に……。ちょっとこれ以上はネタバレになっちゃうので言えませんが、人間って、表の顔と裏の顔があるもんなんだなってことがよくわかるミステリーです」
『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019年)監督ライアン・ジョンソン
「ミステリーといえば!な探偵ものです。今回紹介する作品の中では一番新しい映画なので、ミステリー好きの方でも、まだ見たことがない人がいるかもしれないと思って選びました。最初に犯人がわかった状態で物語が進んでいくという、珍しい構成の作品です。その事件を追う探偵さんがすごくかっこよくて、爽快な推理シーンが見ものです」
「物語は、超富豪のミステリー作家がある日殺害されるところから始まります。殺害のシーンが最初に出てくるので、『この犯人はどうなっちゃうんだろう……』という結末が最後まですごく気になるんです。遺産をめぐる殺人と探偵もの、というありがちなシナリオを思い描いているとミスリードしてしまう、二転三転するストーリーは圧巻です」
単なる謎解きや事件解決のストーリーではなく、人間というものの奥深さまで描いた上記2作品。Netflixなどの動画配信サービスでも見ることができるので、ぜひチェックしてみてください。
わからなさも、モヤモヤもおもしろい? ミステリーのマニアックな楽しみ方
「現実世界でも人を疑うようになったので、見すぎに注意です(笑)」というほどミステリーの世界にどっぷりつかっているyokopiさん。おすすめ作品の次は、見るのがもっと楽しくなるマニアックなミステリーの鑑賞方法を深掘りして聞いてみました。
そもそも、ミステリーはサスペンスとは異なるジャンル。「線引きが難しいんですけど、一般的にミステリーとされている作品は探偵ものだったり、SFや都市伝説が入っていたりと、サスペンスよりも非日常の世界が描かれていることが多いです。現実には起きなそうな物語だからこそ、見るのがつらくなるような表現もあまりないし、ハマるんだと思います」
yokopi流の楽しみ方(1)「開始30分ほどでいったん犯人を決め打ちしてみる」
「見ていると誰でも『この人が犯人だろうな』って予想をし始めると思うんですが、私はだいたいその予想を外します(笑)。でも、その裏切られる感覚こそミステリーの快感! 犯人を見つける定番のルールは『一番怪しくなさそうな人と、主人公に一番近い人物は黒』なんですけど、それでもたまに外れることがあります」
最初の30分で一度犯人を決め打ちすることで、予想が外れたときの驚きと、当たったときの爽快感、どちらになっても楽しむことができるそう。ただし、「いい人が出てきたら、その人を信じすぎないように」とyokopiさん(笑)。「その人が犯人だったら、裏切られたとき悲しいので……」
yokopi流の楽しみ方(2)「衝撃のラストが理解できない……のもまるっと楽しむ」
「ミステリーは張り巡らされた伏線を考察するのが醍醐味(だいごみ)なんですけど、見終わった後に探偵の推理に納得できなかったり、『そんな伏線あったかな?』と思うことも多い」そう。ですが、わからなかったらわからなかったで、他の人の考察や感想を調べて読むのがまた楽しいとyokopiさんは言います。
「感想を読んでいるうちに、また見たくなるんです。ストーリーの流れがわからなくても楽しめるのがミステリーの魅力。あとは、伏線は理解できたとしても、悲劇の結末に何だかモヤモヤしちゃうときもあるんですけど、それも込みでミステリーっていいなって思います」
ミステリーこそ映画館で。おすすめの最新施設・下北沢「K2」
ふだんは家でiPadを使って映画を見ることが多いyokopiさんですが、最近下北沢におすすめの映画館ができたのだとか。「好きな時間に好きな作品を見たいので、見放題のサブスクサービスを使いがちですが、ミステリーのようなスリルがある映画は映画館へ行くのもいいですよね」。yokopiさんおすすめは、下北沢駅周りの開発の一環で22年1月にオープンした「K2」というミニシアター。
「(tefu)lounge(テフ ラウンジ)」という施設内にある1スクリーン71席のシアターで、同じ2Fには入場料制のラウンジとカフェ、スタジオも併設しています。
「K2は街の映画館って感じがして好きなんです。本編が始まる前に、下北沢にあるいろいろなお店の方が登場して『駅から徒歩2分の居酒屋です。これから映画をお楽しみください』って、前振りや注意事項を言うんですけど、毎回行くたびに違う人が出てきて。下北沢愛があっていいですよね」
ミニシアターのため1日の上映本数は5~6本ほど。監督やテーマごとに特集を組んでいることが多いので、ミステリーの特集がある際はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。ドキドキのスリルとどんでん返しを劇場で味わえたら、家で見るのとはまた違う、最高の爽快感が味わえるかもしれません。
Profile
yokopi
インフルエンサーインフルエンサー・デザイナー・SNSプランナー・音楽キュレーターとして活動。YouTubeではルーティン動画などを配信し同世代の女性を中心に多くの共感を得ている。映画好きで1日1映画とうたうyokopiの Filmarksも随時更新中。
Instagram:https://instagram.com/_yokopii_
Filmarks:https://filmarks.com/users/yokopi
取材・文/赤木百(Roaster) 構成/松﨑明日海(Roaster) 撮影/藤井由依
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