キュービック VPoEの後藤です。 この4月からチームの体制変更によりVPoEを離れることになりました。このエントリーではこの3年キュービックのVPoEとして実現したこと、できなかったことをこのブログに綴ります。
後任にはネットエイジ、サイボウズ、パイプドビッツグループでSREの腕を磨いた鶴木将文、USEN、dipでプロダクト開発とマネジメントの腕を磨いた管智彰の2名に役割を引き継ぐことにしました。鶴木将文はSREチーム、コーポレートITチーム、管はメディア・プロダクト開発チームとDX戦略チームを管掌します。
後藤はキュービックを離れインキュベーションビークルであるキュービックベンチャーズにて新規事業育成を統括します。
1 まずは技術アセスメント(現在地の把握)
2020年入社して最初の仕事はキュービックの技術者と技術の現在地を把握するための技術アセスメントでした。その結果全般的に整備が必要だったのですが、いの一番に行うべきは技術の土台となる技術プラットフォーム(コーポレートIT&AWSインフラ)を整えることでした。
2 コーポレートITの組成
2020年7月にコーポレートITチームを立ち上げました。チームしての役割を明確化しセキュリティの整備をはじめました。社員第一号は清水くんでした。その後清水くんを中心に情報セキュリティ規定の策定と運用、ネットワークリプレイスやSlackリプレイス、今回ゼロトラストなどの大きめの施策を実施しています。
2022年9月まで後藤がマネージャーをしてきましたが2022年10月から鶴木にバトンタッチし、2023年5月にはいよいよ専属マネージャがジョインします。
3 AWSを面倒みるチームの組成
2020年7月にAWSを担うプラットフォームチーム(SREの前身)を立ち上げました。これまではICTCメンバーで手の空いているメンバーがroot権限を持ちプロダクション環境にアクセスしていましたが事故るリスクが高いことから、責任と権限を明確化にするためチーム編成に踏み切りました。MGRを後藤が兼任しや形になります。
その後2020年8月から半年かけてWAF/GardDutyなどのセキュリティの整備やMackerelの整備などの基本的なサービス監視の仕組みづくりが実現できました。
2021年7月に鶴木ジョインに伴いSREという役割とチーム名称に変えました。IaC、Watatsumi、Datadogなどトレンディーなテクノロジーを導入し高可用性な仕組みを実現できています。またAWSのコスト削減も実現できました。(SREの活躍についてはこのブログのエントリーを読んでいただければ)
4 事業基幹システムについて
キュービックのメディア事業を支える事業基幹システムはローンチから4年程度になるのですがなんとかワークしていました。ソフトウェアのアプリケーションアーキテクチャ設計はしっかりされていたもののジュニアエンジニアによる継続したメンテナンスが行われてきたことからデータモデル(スキーマ設計)やソフトウェア品質など課題満載でだましだまし改善を行ってきました。残念ながら様々な施策を投入してきました抜本的な改善には至りませんでした。
ビジネスサイドからの改善要望が継続する中で事業基幹システムをWebアプリケーション(RDB)からDWHへリプレイスに踏み切ったのは2021年の後半からとなります。結果2023年3月から7月にかけて順次DWHにロールアウトしていきます。
5 メディア開発について
2020年7月メディア開発チームは後藤がMGR兼務しました。このチームはWordPress職人の業務委託中心で回っておりチームとして機能させるには多くの時間が必要でした。その後エンジニアリング・マネージャやテックリードのジョインなどでチーム化の骨格ができ現在に至ります。
当時100を超えるメディアに対してMainWPによる集中管理や、WordPressのバージョンの最新化なども行ってきました。一方、開発プロセスの標準化を試みましたが完全に実現できませんでした。
6 ERPの導入とDXチームの組成
2020年の春に経営企画主導でERPの導入を経営に提案しましたが見事にボードにリジェクトされました。その後会社の成長にマッチするERPの導入の再検討を経営推進とTECで行われ2021年6月にはボード承認が得られ本格的に設計・構築に入りました。
2022年3月に管がジョインしたことによりDXチームを組成し2022年7月にERPシステムがローンチしています。これに伴い事業基幹システムとの連携や他SaaSとの連携が実現されました。
7 VPoE室の立ち上げ
この3年の大半は採用活動に力を注いだ日々でした。中でもテックリードの採用に非常に苦労してきました。その本質は採用の母集団形成が困難なことでした。
この問題を根本解決するために採用ブランディング(キュービックの技術チーム)に本腰を入れるためVPoE室を立ち上げました。このブログもその取組の一つです。また、アイデアソン・ハッカソンも実現したかったのですが企画リソースが無く実現に至っていません。
8 エンジニア育成のためにしたこと
個々のエンジニアのスキルを可視化しキャリアパスを明確に持ってもらうために最初に取り組んだのはキャリアマップとスキルシートを策定し運用化の実現でした。
運用までうまく周り全社評価制度とのリンクもできました。結果的にスキルシートを採用時に候補者にも記入してもらい採用時の判断からオンボーディングまで現在でも一貫して機能しています。加えてスキルマップに基づき育成も行われており効果的な施策であったと考えています。
2022年にはエンジニア専用の役割定義を策定し各ステージにおける期待役割の明確化を実現しました。エンジニアにとってより具体化された役割定義はキャリアパスを描く上で極めて効果的な施策だったと考えています。
キュービックのエンジニアリング
後藤康成(ごとう やすなり)Twitter : @got
シリコンバレーのスタートアップにてプログラマーとしてエンジニアリングの経験を積む。2000年からネットエイジCTOとしてネットのゼロイチおよびベンチャー投資を担当。その後自身でフィードパスを設立しCOO、CTOを歴任しヤフーへ売却。2012年ヤフーにてソフトバンクとのインド合弁企業を設立しモバイルサービスのゼロイチ担当後、Y! mobileの事業立ち上げを統括。2016年ネオキャリアにて海外事業部CTO兼IT戦略を担当。その後インシュアテックスタートアップのCOOを経て2020年からキュービックのVPoE。2023年からアンパサンド株式会社のCEO。