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長く使い続ける「一生モノ」にはスペック以上の理由があります。モノ選びのプロ12名が、過去と未来の10年を見据えて厳選した計72の価値あるアイテムを紹介。ずっと愛着がわく一生モノ選びのヒントを提案します。

インフルエンサーとしてマルチに活躍する傍ら、昨年には地元・岐阜県の伝統産業である美濃焼タイルを使用したジュエリーブランドをスタートさせた前坂さん。おしゃれなライフスタイルも支持される彼女が、20代の頃からずっと愛用してきた、思い出深いアイテムについてお話しを伺いました。

REVIEWER

前坂美結

ブランドディレクター

前坂美結さん

1992年生まれ。岐阜県出身。アパレルやIT企業勤務を経て、美濃焼ジュエリーブランド「M.MINE」のディレクターを務める。フェミニンとカジュアルが融合したセンスや、洗練されたライフスタイルも支持されている。

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目次

手元に残るモノに「価格」は関係ない

「こうして『10年使ったもの」を振り返ると、見たり使ったりするときに『自分の気分が上がるかどうか』ってとても大切なんだな、と思います。ちょっと心が落ち込んだときにワクワクするとか、自分らしいと感じられるモノが、自然と手元に残っていることに気がつきました』

手元に残るモノに「価格」は関係ない

そう語る前坂さんですが、過去のお買い物から学んだことも多いといいます。

「『迷うけど安いから買っちゃおう』みたいに、『値段』が購入の決め手になったモノは、結局使わなくなってリユースショップ行きになることが多々ありました。洋服に関しては流行を意識したいですし、いろいろなおしゃれを楽しみたいと思っていたので昔はファストファッションも取り入れていましたが、今ではほとんど買わなくなりましたね」

「と言っても、『値段が安いからよくない』ということではなくて、値段関係なくときめいたモノや、自分らしいと感じられるモノは、ずっと心地よい関係でそばにいてくれると感じています」

職業柄、洋服は入れ替わりも多かったそうですが、それ以外は割とモノ持ちがいい方だと語る前坂さん。彼女が10年を共に歩んだ、思い出のアイテムを紐解いていきます。

ブランドディレクター・前坂美結さんが10年使ったもの①:リモワのキャリーケース(エピソードを読む

ブランドディレクター・前坂美結さんが10年使ったもの②:セリーヌのパンプス(used)

ブランドディレクター・前坂美結さんが10年使ったもの②:セリーヌのパンプス(used)(エピソードを読む

ブランドディレクター・前坂美結さんが10年使ったもの③:アリゾナで買ったブーツ形の花瓶(エピソードを読む

傷さえも愛しい、世界を旅した「頼れる相棒」

最初に紹介してくれたのは、ビッグサイズのリモワのキャリーケースです。

「ちょうど就職する直前くらいの時期で、『これからたくさん海外に行きたい』という思いがあって、自分の気持ちを後押しするようなつもりで買ったことを覚えています」

ずっと使うことを念頭に置いて選んだシンプルでオーソドックスなデザイン

「小さいキャリーケースはいくつか持っていましたが、ビッグサイズのものを買うならずっと憧れていたリモワにしようと───高価なお買い物でしたが、貯めていたバイト代で奮発しました」

「社会人になってからはこのキャリーケースと一緒にいろいろな国を旅行しました。ハワイ、フランス、ロンドン、ノルウェー、ドバイ、アジアの国にもたくさん行きました」

空港で貼られるシールや、旅の途中でついた凹みも大切な思い出

海外の文化に触れることは、20代の前坂さんに大きな影響を与えたといいます。

「もともと内気な性格で、自分の気持ちを表現するのが苦手だったんです。けれど海外の人のオープンなコミュニケーションに触れたことで、『かっこいいな』『自分もそうしてみよう』と思うようになり、少しずつ変わっていくことができました」

このキャリーケースについた傷やシールを見るたびに「一緒に成長してきたね」という気持ちになるそう。これからもきっと旅を共にして、思い出を刻んでいくことでしょう。

ブランドディレクター・前坂美結さんが10年使ったもの①リモワのキャリーケース

リモワらしい縦リブの入ったアルミニウムボディで、使い込まれた凹みも味になる。丸みが少ない直線的なフォルムも、クラシカルな印象でお気に入り

ヴィンテージショップで出会った「運命の一足」

大学を卒業してアパレル企業に就職した前坂さん。ファッションの勉強も兼ねてヴィンテージショップ巡りをしていたときに「運命の一足」に出会います。

「私は身長の割に足が小さくて、22cmなんです。だから自分に合うパンプス探しはいつもひと苦労。でも当時ハマっていたヴィンテージショップでこの靴を見つけて、試しに履いてみたら、驚くほどぴったり。店員さんにも『この靴が合う人はなかなかいません』と言われて、『運命だ』とドキドキしたことを覚えています」

買ったばかりの頃は、大切にしすぎてしばらく履けずに眺めていたほど

買ったばかりの頃は、大切にしすぎてしばらく履けずに眺めていたほど

「当時の会社にはおしゃれな先輩がたくさんいて、彼女たちが身につけているハイブランドにも憧れがありました。セリーヌのアイテムを持っていなかったので、初めて手に入れたときの高揚感は今でも忘れられません」

憧れのアイテムを手に入れることは、彼女にとって単なるおしゃれ以上の意味があったといいます。

「『これから大人の女性として頑張っていくんだ』と、背筋が伸びる感覚でした。次のステージに立たせてくれる、自信を与えてくれるような存在で、展示会でお客様をアテンドするときなど、気合いを入れたい日に履いて大切にしてきました」

まさに「シンデレラフィット」のサイズ感。チャンキーヒールのクラシカルな雰囲気が魅力

今でも記念日や知人の結婚式など、特別な日に出しては、大切に履き続けているそう。「おばあちゃんになるまで履くのもいいし、いつか娘ができたら譲る未来も素敵ですよね」───そんな風にこれからのストーリーを思い描く時間も、前坂さんにとって幸せなひとときになっています。

ブランドディレクター・前坂美結さんが10年使ったもの②セリーヌのパンプス(used)

ダークグリーンのシックなカラー。ゴールドの金具がローファーライクなデザインで、甲部分の縫い目がモードな印象をプラス

ダークグリーンのシックなカラー。ゴールドの金具がローファーライクなデザインで、甲部分の縫い目がモードな印象をプラス

暮らしの風景に溶け込む「アリゾナの思い出」

最後に紹介してくれたのは、かわいらしいブーツ形の花瓶。

「大学生の頃に、3ヶ月間アメリカのアリゾナ州に留学していたことがあって、記念に買ったものなんです。アリゾナは西部劇が有名で、ウエスタンブーツをモチーフにしたお土産がたくさんありました。中でも、温もり感のあるお花柄が『かわいい!』と思って思わず手に取ったのがこの花瓶でした」

手書きタッチのお花模様とやわらかな色使いがマッチ

手書きタッチのお花模様とやわらかな色使いがマッチ

「ちょっとずつ違う色や柄の中から、『コレだ』と思うものを選びました。旅先で購入したものを暮らしに取り入れるのが好きなのですが、この花瓶が一番気に入っているかもしれません。もう長い間キッチンでカトラリー入れとして使っています。高価でも貴重でもありませんが、『10年使ったもの』と聞いて真っ先に思い浮かぶくらい、私の中で『好き』の温度が変わらないんです」

お箸やスプーンなど、カトラリーを入れるのにちょうどいい大きさ

お箸やスプーンなど、カトラリーを入れるのにちょうどいい大きさ

「アリゾナで過ごした時間は、実は楽しい思い出だけではありませんでした。内向的な性格を変えたくて留学しましたが、気を遣いすぎてしまうので常に周りを気にしてしまって……途中で帰りたいと思ったことも。その頃は前進したい気持ちはありつつも、『このまま変われないかもしれない』という不安や焦りが入り混じっていました。帰る頃には自分も楽しめるようになりましたが、改めてこの花瓶を見ると、当時の苦かった経験も、今の自分をつくる大切な一部だったのだと感じます」

たくさんの旅の記憶が散りばめられた前坂さんの家。大学生のときに経験した貴重な思い出は、今でもキッチンの片隅で静かに息づいています。

ブランドディレクター・前坂美結さんが10年使ったもの③アリゾナで買ったブーツ形の花瓶

ウエスタンブーツをモチーフにした小さめの花瓶。温もりのある雰囲気で、キッチンにさり気ない彩りを添える

「成長の記憶」が宿る思い出のアイテム

10年間愛用したアイテムを優しい眼差しで眺めながら前坂さんはこう語ります。

「新しいものに惹かれることももちろんありますが、長く一緒にいるモノたちは、ふと立ち止まって初心に帰らせてくれるような特別な存在です。20代前半だった10年前は、とにかくたくさん経験して吸収して知識を増やしたいと思っていた頃。エネルギーややる気に満ちあふれていたので、背中を押してくれたり、自分を鼓舞してくれるようなモノに自然と惹かれていたようです」

「出会った頃のドキドキした気持ちが今でも忘れられない」と微笑む前坂さん

「出会った頃のドキドキした気持ちが今でも忘れられない」と微笑む前坂さん

「流行やスペックではなく『自分の物差しで心が動くか』で選んで購入したアイテムなので10年経っても飽きることはありませんし、20代だった自分の『成長の記憶』が刻まれているので、簡単に手放すことはできません。古びたり壊れたりしてもメンテナンスしながら、これからもできる限り長く使い続けていきたいと思います」

30代になり、生活スタイルも変わった今では、20代のときとは違う視点でモノ選びをするようになったという前坂さん。そんな彼女が「10年後も使いたいもの」は、後半の記事でご紹介します。

撮影/wacci 編集・文/豊泉陽子