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長く使い続ける「一生モノ」にはスペック以上の理由があります。モノ選びのプロ12名が、過去と未来の10年を見据えて厳選した計72の価値あるアイテムを紹介。ずっと愛着がわく一生モノ選びのヒントを提案します。

モデルとして、そしてデザイナーとして、常に自身のクリエイションを深化させている酒井景都さん。その唯一無二のセンスの根底には、アンティークショップを営んでいた両親の影響があるそう。幼少期をイギリスで過ごし、美しいものに囲まれて育ったことで養われた審美眼は、今も彼女の美意識の核となっています。今回は、酒井さんが大切に使い続けてきた「人生の相棒」と呼べるアイテムについて、その背景にあるストーリーと共に伺いました。

REVIEWER

酒井景都

モデル・デザイナー

酒井景都さん

中学時代に雑誌『Olive』でモデルとして活躍。慶應義塾大学在籍中に自身のファッションブランド『COLKINIKHA』をリリース。以後ファッションデザイナー・ディレクターとして活躍。2027年春夏にオリジナルレースを使った新ブランドNIKHAをリリース予定。著書多数。9歳の女の子と2歳の男の子のママ。

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目次

日常に溶け込み、本来の自分に立ち返らせてくれるモノ

「最近のモノ選びでは、それが家にぽんと置いてあってもインテリアとしてサマになるか、自分にとってノイズにならないかという視点を大切にしています。仕事に育児に、日々考えることは大小さまざま。思考が常に忙しなく動き、情報に溢れているからこそ、せめて視界に入るものは、心を休息させてくれるような、自分が心地いいモノに厳選したいんです」

日常に溶け込み、本来の自分に立ち返らせてくれるモノ

かつては、その場の直感やインスピレーションだけでモノを選んでいた時期もあったと言います。しかし今、改めて手元に残り続けている品を眺めると、どれも時が経っても色褪せない愛用品ばかり。何となく選んでいた当時の直感。それは裏を返せば、日々の暮らしのなかで静かに、けれど確実に彼女の審美眼が育まれていた証だったのかもしれません。

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの①:Susie Cooper(スージー・クーパー)のオーバル皿

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの①:Susie Cooper(スージー・クーパー)のオーバル皿(エピソードを読む

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの②:MISSONI(ミッソーニ)のトランク

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの②:MISSONI(ミッソーニ)のトランク(エピソードを読む

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの③:グッチのバンブーバッグ

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの③:グッチのバンブーバッグ(エピソードを読む

色彩感覚を育んだ、Susie Cooper(スージー・クーパー)のオーバル皿

酒井さんの美意識の原点にあるのが、母から譲り受けたスージー・クーパーのオーバル皿です。スージー・クーパーは、1902年にイギリスで生まれ、一般家庭の日常を彩る食器を数多く手がけた女性陶器デザイナー。幼少期をイギリスで過ごした酒井さんにとって、スージーが手がけた器が家にある風景は、日常そのものでした。

母の影響で、スージー・クーパーのアイテムは家に多くあったそう

母の影響で、スージー・クーパーのアイテムは家に多くあったそう

「彼女の器の、淡く、少し彩度が低い絶妙な色合いが大好きなんです。かつて住んでいた家の壁の色を、この食器の色彩に合わせて塗り分けたこともあるほど、私の感性に深く入り込んでいます。大学時代の友人からも『景都のデザインする服や絵の色合いは、この食器の影響を受けているよね』と言われてハッとしたことがあるくらい、私の色彩感覚の原点になっていると思います」

酒井さんの描く絵画と、どこか色使いが通ずる

酒井さんの描く絵画と、どこか色使いが通ずる

今は食卓で日常使いするのではなく、飾ったり、特別な来客の際にちょっとお菓子を盛り付けたりするそう。古き良きイギリスの空気感を纏いながら、酒井さんの創造性の源として、今も静かに彼女のそばにあり続けています。

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの①スージー・クーパーのオーバル皿

20世紀を代表するイギリスの陶器デザイナーによる作品。独特の柔らかなパステルカラーや繊細な模様は、世界中にコレクターを持つ。酒井さんが譲り受けたオーバル皿は、温かみのある質感と、独自の色彩美が特徴

20世紀を代表するイギリスの陶器デザイナーによる作品。独特の柔らかなパステルカラーや繊細な模様は、世界中にコレクターを持つ。酒井さんが譲り受けたオーバル皿は、温かみのある質感と、独自の色彩美が特徴

20年前、一目惚れしたMISSONI(ミッソーニ)のトランク

酒井さんが「衝動買いをしたのは、後にも先にも人生でこれだけかもしれません」と振り返るのが、20年前に手に入れたミッソーニのトランクです。

深いグリーンの幾何学模様は、ミッソーニならでは

深いグリーンの幾何学模様は、ミッソーニならでは

大学を卒業した社会人1年目の頃、表参道の並木通りにあるウインドウに飾られていたこのトランクに目が釘付けになりました。

「特にキャリーケースを探していたわけではなかったんです。でも、イギリスの風景を彷彿とさせる深いグリーンのニット素材と、クラシカルな佇まいに、一瞬で心を奪われてしまって。一度はお店の前を通り過ぎたのですが、どうしても忘れられずに戻って購入しました」

旅の気分を盛り上げてくれるようなビビッドなオレンジ

旅の気分を盛り上げてくれるようなビビッドなオレンジ

当時の酒井さんにとって決して安くない買い物でしたが、これから本格的に社会に出ることへの決意表明として購入。それ以来、ヨーロッパをはじめとする数々の旅をともにしてきました。布製で柔らかいため、見た目以上に荷物が入る実用性も、長年愛用し続けている理由の一つです。

ヨーロッパ旅行もともにした相棒的な存在

ヨーロッパ旅行もともにした相棒的な存在

「もし壊れても修理して使い続けたい」と思えるのは、このトランクが酒井さんのキャリアの始まりに寄り添い続けてくれた、唯一無二の存在だからなのでしょう。

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの②ミッソーニのトランク

ミッソーニを象徴する繊細なニット編みが特徴的なキャリーケース。酒井さん愛用のモデルは、深いグリーンを基調としたクラシカルなデザイン。布製ならではの柔軟性を持ち、20年にわたる旅の記憶が、使い手だけの風合いとして蓄積されている

ミッソーニを象徴する繊細なニット編みが特徴的なキャリーケース。酒井さん愛用のモデルは、深いグリーンを基調としたクラシカルなデザイン。布製ならではの柔軟性を持ち、20年にわたる旅の記憶が、使い手だけの風合いとして蓄積されている

カジュアルにもなじむ、グッチのバンブーバッグ

15年ほど前に高島屋で購入したグッチのバンブーバッグは、酒井さんが愛してやまない「普遍的な美しさ」を体現するアイテムです。

ハンドバッグにもショルダーにもなる便利な2WAY

ハンドバッグにもショルダーにもなる便利な2WAY

「昔からオードリー・ヘプバーンに憧れていて、流行に左右されないクラシカルな佇まいに惹かれていました。このバンブーバッグは、まさにオードリーが持っているような雰囲気のアイテムで、一目惚れして以来ずっと愛用しています。当時はお財布やキーケースも同じシリーズで揃えていたのですが、今も手元に残っているのがこのバッグです」

購入当初は、オケージョンで使うことがメインでした。しかし、15年という月日を経て革が柔らかく自分に馴染んできたことで、最近ではデニムなどのカジュアルな装いにもしっくりと合うようになったそう。

15年ほど使い込み、クタッと柔らかな風合いに育った

15年ほど使い込み、クタッと柔らかな風合いに育った

「このバッグはいつ手に取っても『やっぱり素敵だな』と思わせてくれる安心感があります。竹(バンブー)の部分が湿気で伸びてしまったのですが、メンテナンスに出して、この先もずっと使い続けたい。時間が経つほどに愛おしさが増していく、私にとっての定番品です」

モデル・デザイナー酒井景都さんが10年使ったもの③グッチのバンブーバッグ

竹をハンドルに採用した2WAYバッグ。酒井さん愛用のモデルは、黒のレザーにバンブーが映えるクラシカルなデザイン。仕切りやポケットが多く、デザイン性だけでなく、日常の必需品を整理して持ち運べる機能性も兼ね備えている

竹をハンドルに採用した2WAYバッグ。酒井さん愛用のモデルは、黒のレザーにバンブーが映えるクラシカルなデザイン。仕切りやポケットが多く、デザイン性だけでなく、日常の必需品を整理して持ち運べる機能性も兼ね備えている

変化の激しい時代だからこそ、変わらない「自分らしさ」に立ち返る

これら10年、20年と手放さなかったモノたちの共通点は、「クラシカルであること」と「手にした瞬間のときめきを思い出せること」にあると酒井さんは語ります。

「大人になるにつれ、身のまわりのものはシンプルに、削ぎ落とされていく傾向にあります。でも、あえてこうした思い入れのある、自分らしいアイテムを日常に取り入れることで、『本来の自分は何にときめいていたのか』を再確認できるんです」

器を愛おしそうに眺める酒井さん

器を愛おしそうに眺める酒井さん

流行や年齢とともに、着る服やライフスタイルは変化していきます。それでも、母から譲り受けたお皿や、20年前の自分が一目惚れをして買ったトランク、使うたびに惚れ惚れするようなバッグを眺めるたび、自分の中にある変わらない軸を思い出すことができる――酒井さんにとっての「一生モノ」とは、過去の自分と今の自分を繋ぎ、未来へと導いてくれる大切な道標のような存在なのかもしれません。

撮影/wacci 編集・文/藤田華子