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長く使い続ける「一生モノ」にはスペック以上の理由があります。モノ選びのプロ12名が、過去と未来の10年を見据えて厳選した計72の価値あるアイテムを紹介。ずっと愛着がわく一生モノ選びのヒントを提案します。

千葉県勝浦市の海辺で育ち、現在も休日には砂浜に赴くなど、自然のパワーを受け取りながら活動する姿が印象的なヘアスタイリストの中島潮里さん。
2018年8月のオープン以来、環境に配慮されたヘアケア、ライフスタイルの提案をしているヴィーガンビューティサロン&カフェ「whyte(ホワイト)」のディレクターとして国内外で活躍されています。そんな彼女のモノ選びには、大切な家族の影響と、生活を整えてくれるモノと過ごす喜びが反映されています。
太陽のような笑顔が眩しい中島さんに、10年以上を共にしてきたモノについて伺いました。

REVIEWER

中島潮里

美容師/サロンディレクター

中島潮里さん

美容師・ヘアサロン「whyte(ホワイト)」ディレクター。
2025年12月にはスウェーデン店をオープン。お店の名前は英語の「why(なぜ)」と「white(白)」を掛け合わせた造語で、whyは「お客さまの疑問、悩みを解決すること」、whiteは「それによって内側から浄化されるイメージ」を表し、心身ともにサステナブルになることを目指す。勝浦の海がルーツで、現在もスキンダイビングやキャンプを好むアクティブな一面を持つ。

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目次

モノに宿る背景と、自分とのリンクを大切に

「長く使い続けているモノには、単なる道具以上の物語が宿りますよね。一生モノからは、人から人へ受け継がれる物語の、循環の輪の中にいる喜びを感じさせてもらっています」

モノに宿る背景と、自分とのリンクを大切に

中島さんがモノを選ぶ際、ブランド名やスペック以上に重視するのは、そのモノがどのような縁で自分の元へ巡ってくるかという物語。小学生の頃から美容師になることを疑わなかった彼女は、モノとの出会いもまた、必然的な巡り合わせのように感じるといいます。

「日常の中で、ふとした瞬間にそうした物語のあるモノたちを目にしたり触れたりすることで、張り詰めていた気持ちがふっと解けて、自分らしさを取り戻せる感覚があるんです。特に家族から受け継いだものは、そのモノに宿る記憶や温もりが、いつどんな時も自分を支える『お守り』のようになっていると思います」

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの①:草木染めの着物と袋帯(used)

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの①:草木染めの着物と袋帯(used)(エピソードを読む

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの②:シザー(used)

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの②:シザー(used)(エピソードを読む

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの③:抹茶点てセット(茶筅、茶碗、茶匙など)

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの③:抹茶点てセット(茶筅、茶碗、茶匙など)(エピソードを読む

三代の想いを乗せて。スウェーデンで日本の伝統文化を伝えた着物と帯

中島さんが生涯の宝物として挙げたのは、父方の祖母から母へ、そして自分へと受け継がれた昭和初期に作られた草木染めの着物と、それに合わせる袋帯です。

今は一般的に未婚女性が着用する振袖だが、いずれはライフステージに応じて袖を仕立て直し、長く着ていく予定

今は一般的に未婚女性が着用する振袖だが、いずれはライフステージに応じて袖を仕立て直し、長く着ていく予定

「2025年のスウェーデン店オープン時のレセプションで、日本らしいおもてなしとして和装で抹茶を振る舞いたいと考えました。母に相談したところ、『ピッタリのものがあるよ』と出してくれたのがこの一着でした」

この着物は、中島さんの母親が結婚式の前撮りでも着用した思い出深い品。草木染め特有の深みのある色合いと、柔らかい質感が特徴です。

大切に保管し、時より風通しも行う

大切に保管し、時より風通しも行う

「スウェーデンでは、この着物を着て抹茶を点てる姿がとても好評でした。三代にわたって着継いでいるというストーリーは、モノを大切にする北欧の人々の心に響いたようです。袖を通すと背筋が伸び、前に進むことを、家族に後押しされているような安心感を覚えます」

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの①草木染めの着物と袋帯(used)

天然染料で染め上げる草木染めの風合いと、上質な絹糸を使っていることがわかる極上の肌触りが特徴。華やかな袋帯が、着物を引き立てる。現在は特別な日の一張羅として大切に保管されている

天然染料で染め上げる草木染めの風合いと、上質な絹糸を使っていることがわかる極上の肌触りが特徴。華やかな袋帯が、着物を引き立てる。現在は特別な日の一張羅として大切に保管されている

祖母の魂を継ぐ、美容師としての誇り。メンテナンスで蘇ったシザー

中島さんの仕事道具であるシザー(ハサミ)の中には、戦前にサロンを経営していた父方の祖母が愛用していたものが含まれています。

思い切り髪を短くする時など、大胆なカットに向いているというシザー

思い切り髪を短くする時など、大胆なカットに向いているというシザー

「祖母が美容師だったという話は父から聞いていました。祖母のサロンは皇室の方も訪れていたお店で、おもてなしとして抹茶を振る舞うスペースを設けるなどしていたそう。きっと素敵な場所だったんだろうなと想像しています。私がこのシザーを手にした時はサビだらけで、研ぎ屋さんにも研ぎ直すのは難しいと断られましたが、どうしても諦めきれず、無理を言ってメンテナンスしてもらったんです」

美容師が天職だという中島さん

美容師が天職だという中島さん

見事に復活を遂げたそのシザーは、今も中島さんの手の中で現役として活躍。シザーを握るたびに祖母と同じ道を歩む喜びを噛み締めるといいます。

「半年に一度はメンテナンスに出し、切れ味を保ちながら使い続けています。ざっくり大胆に切る時にぴったりのアイテムなのですが、私にとっては手の一部のような一体感があって、機能的にも精神的にも大切な存在です」

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの②シザー(used)

祖母の遺品を、メンテナンスして愛用。この他にもシザーは多く所有しているが、この1本は一際思い入れがある

祖母の遺品を、メンテナンスして愛用。この他にもシザーは多く所有しているが、この1本は一際思い入れがある

日常に静寂をもたらす、心のリセット装置としての抹茶点てセット

ヘアスタイリストとして常に人と接する日々の中で、中島さんが意識的に作っているのが「自分を落ち着かせる時間」。そのためのアイテムが、抹茶点てセットです。

現在は、裏千家のお稽古にも通う

現在は、裏千家のお稽古にも通う

「朝、仕事に出る前や休日のひとときに、自分で抹茶を点てる。茶筅(ちゃせん)を振る音を聞きながら、お茶の香りに包まれる時間は、私にとってマインドをリセットするための大切な儀式です」

自ら揃えたもののほかに、叔母から譲り受けた茶筅なども含まれています。現在は裏千家の教室にも通い、本格的にその精神性を学んでいる最中だそう。

お菓子やお手前の内容で季節の移ろいを感じる、大切な時間

お菓子やお手前の内容で季節の移ろいを感じる、大切な時間

「抹茶に含まれるカフェインの力を借りて眼を覚ます目的もありますが、それ以上に、一連の所作を通じて自分の内面と向き合えるのがいい。もっと人生の経験を積んだ自分が点てるお茶を、どう味わうのか。そんな変化を楽しみにしながら、この道具たちを使い続けていきたいと考えています」

ヘアスタイリスト・中島潮里さんが10年使ったもの③抹茶点てセット(茶筅、茶碗、茶匙など)

中島さんが自身のマインドフルネスのために揃えた道具一式。一部は叔母から引き継いだもので、家族の繋がりも感じさせる。日常に「静」の時間を取り入れるための欠かせないツール

中島さんが自身のマインドフルネスのために揃えた道具一式。一部は叔母から引き継いだもので、家族の繋がりも感じさせる。日常に「静」の時間を取り入れるための欠かせないツール

モノと向き合い、自分を整える

中島さんが長年愛用するモノたちには、共通して「自分自身のマインドに作用する力」が宿っているよう。

「家族から託された着物やシザー、お茶のアイテムには、自分を支えてくれるルーツへの安心感があります。忙しない日常から解き放ち、本来の自分へと立ち返らせてくれるスイッチとしての役割がありますね」

忙しない日々のリラックスタイム

忙しない日々のリラックスタイム

家族から受け継いだバトンが、彼女の仕事や暮らしを支える大切な存在となっています。

撮影/藤井由依 編集・文/藤田華子