揚げ物鍋のおすすめ12選！料理研究家が揚げ物鍋を選ぶポイントとおいしく揚げるコツを解説

「揚げ物はフライパンや片手鍋を使っているけど、揚げ物鍋って必要？」
「揚げ物鍋で揚げると、カラッとおいしい揚げ物になるって本当？」

揚げ物鍋は天ぷら鍋ともいわれ、深さと厚みがあり熱伝導率の高い素材でつくられているため、揚げ物をすばやくおいしく作ることができます。揚げ物鍋に興味はあるけどどう選べばよいのか、おすすめはどれなのかを知りたい人もいるでしょう。
そこで、揚げ物鍋を使うメリットやおすすめの揚げ物鍋、選び方を料理・調理道具研究家の北山みどりさんに聞きました。

また、your SELECT.編集部おすすめの揚げ物鍋12選もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。

揚げ物鍋の選び方

揚げ物鍋は天ぷら鍋とも呼ばれ、高温の油を入れて調理することを想定して安全性に考慮してつくられています。揚げ物鍋のサイズや素材による違いについて、料理研究家であり、調理道具にも精通している北山さんに聞きました。

直径18cm以上ならほとんどの揚げ物料理が可能。ファミリーは20cm以上でも◎

家族の人数ではなく、つくりたい料理によって揚げ物鍋のサイズを選ぶ

人数と揚げ物鍋の大きさは必ずしも比例しません。鍋を選ぶ場合はどんな揚げ物料理をつくるのかを考えて、サイズを決めるといいでしょう。

揚げ物をする場合は、食材全体がしっかりと油につかるサイズであることが大事です。えびの天ぷらや春巻きなど細長いものを揚げるとしたら、直径18cm以上は必要です。ただし、唐揚げやコロッケ、お弁当用に少量を揚げるくらいなら18cm未満のサイズでもいいでしょう。

また、4人以上のファミリーの場合など、一度に多くの揚げ物をしたい場合は直径20cm以上の揚げ物鍋が使いやすくておすすめです。

お鍋が大きくなるほど必要な油の量が増えるので、油の処理を考えると直径18cmくらいの揚げ物鍋で複数回に分けて揚げるという選択肢もあります。

おいしい揚げ物に重要な「蓄熱性」と「扱いやすさ」で素材を選ぶ

揚げ物をおいしく調理するために一番大事なのは温度を一定に保つこと。しかし、油に食材を入れていくと油の温度はどうしても下がります。そのため、揚げ物鍋の油の温度が下がっても、すぐに揚げ物に適した温度に戻る蓄熱性は非常に重要です。

揚げ物鍋には素材によって熱伝導率や蓄熱性が異なるため、以下で素材ごとの特徴を比較してみましょう。

鉄：熱伝導率が高く、大量に揚げ物をするファミリー向け

鉄製の揚げ物鍋は熱伝導率が高いので、すぐに油を適温まで上げてくれるので家庭での使い勝手がいいです。蓄熱性はあまり高くないですが、それをカバーするために厚みのある鉄の揚げ物鍋も増えています。

汚れがつきやすいので、コーティング加工されている商品を選ぶとお手入れしやすくておすすめです。さびやすい素材なので、洗った後は水滴をすぐに拭くなどお手入れも必要です。

鉄の揚げ物鍋を選ぶときは、厚みがあってコーティング加工されているものがおすすめ

ステンレス：蓄熱性が高く、揚げ物の機会が多い人におすすめ

ステンレスは熱伝導率が低いので、油が温まるまでに時間がかかりますが、蓄熱性は高いので一度温まったら冷えにくいです。

ステンレス鍋は商品によって多層構造になっていて、ステンレスとステンレスの間に、熱伝導率の高いアルミニウムが挟まっているタイプもあります。その場合、アルミニウムが鍋全体を温める働きをすることで、熱伝導率が高くなります。
汚れがつきにくく、洗えば汚れもにおいも取れるのでお手入れは非常にしやすく、揚げ物の機会が多い人におすすめです。

多層のステンレス鍋は熱伝導率が高くなるのでおすすめ

銅：熱伝導率・蓄熱性が高く、おいしさを追求する人向き

銅は熱伝導率が高く油がすぐに温まり、さらに蓄熱性も非常に高いです。冷えた食材を入れても温度が下がりにくいので、サクッと仕上がるため、揚げ物をおいしく作るのにもっとも適した素材。天ぷら屋さんなどプロも多く愛用しています。

ただし、汚れがつきやすいのでお手入れをまめに行う必要があります。また、銅は酸や塩素、湿度などによってサビの一種である緑青（ろくしょう）がつきやすいため、洗ったらすぐに水滴を拭いて、湿度の低いところで保管しましょう。

銅はこまめな手入れが必要だが、多くのプロに愛用されている

ホーロー：蓄熱性が高く、デザインにこだわる人におすすめ

ホーローは金属素材の表面にガラス質を焼き付けた素材です。見た目がおしゃれでデザイン性があります。特徴としては熱の伝導性が低いので油が温まりにくいですが、蓄熱性があるので一度温まると冷めにくいです。一定の温度を保ちやすいため、おいしい揚げ物ができます。

汚れがつきやすく、重たいので取り扱いには注意が必要です。衝撃に弱く、落としてしまうとヒビが入ることもあります。

ホーローの揚げ物鍋は見た目がかわいらしいので、デザインにこだわる人にもおすすめ

IHに対応しているかもチェック

IHコンロで揚げ物をするときは、ガス火よりも時間がかかる

IHコンロを使っている人も多いと思います。揚げ物鍋はガス火だけでなく、IHでも利用できます。IHは温度設定ができるものが多く、揚げ物をおいしく揚げるための重要な要素である「油を一定温度に保つ」ことがしやすいです。

ただし、IHで揚げ物鍋を温めた場合、温まる部分は揚げ物鍋の底辺だけで、ガス火に比べると温まるまでに時間がかかります。そして、揚げ物鍋の中で下の方がより熱くなりやすいため、ときおり混ぜるといいでしょう。

多くの商品がIHコンロに対応していますが、銅の揚げ物鍋はIHで使用できないことが多いので注意してください。

また、IHで利用できる商品の中には、「IHの揚げ物専用モードでは使用しないでください」というただし書きがついているものがあります。IHクッキングヒーターの「揚げ物モード」や「天ぷらモード」が使える鍋は、IHクッキングヒーターのメーカーによって異なり、メーカーが指定する専用鍋を使うことが前提になっています。専用鍋以外の揚げ物鍋を使う場合は揚げ物モードを使わずに通常の加熱モードで使用するようにしましょう。

おすすめの揚げ物鍋12選

北山さんの話を参考に、your SELECT.編集部がおすすめの揚げ物鍋を厳選。手軽に買えるコスパのいいものから、本格的な銅の揚げ物鍋まで幅広く紹介します。

金属加工で知られる燕三条製の鉄製の揚げ物鍋です。油の飛び散りを防止してくれるフードや温度計など、便利な機能が多く使い勝手の良さが特徴。フタの裏側には油切り網がついていて、落ちた油は揚げ物鍋に戻る仕組みです。価格も3000円以下と手が届きやすいので、手軽な揚げ物鍋を探している人におすすめです。

黒い色合いがスタイリッシュな印象的なパール金属の揚げ物鍋です。2000円を切る低価格帯ながら、油の飛び散りを防ぐフードや温度計などの揚げ物に役立つ機能がついています。IHでの使用も可能ですが、揚げ物モードは使用できないので注意が必要です。手軽な揚げ物鍋を求めている人におすすめです。

和平フレイズの千歳（ちとせ）シリーズの鉄製の揚げ物鍋です。千歳には、愛着をもって末長く使い続けてほしいという意味が込められています。使い込むと油なじみがよくなって焦げ付きにくくなるため、耐久性にもすぐれています。油切りがフタの上についていて余分な油はお鍋に落ちるため、バットなどの調理器具を別で用意する必要もなく便利です。

ラバーゼの「鉄揚げ鍋セット」は揚げ物鍋に油はね防止ネットと揚げかごがついています。油はね防止ネットはメッシュ素材で、飛び散りを防ぎながらも食材の様子も確認できます。揚げかごによって油への食材の投入と引き上げる作業がスムーズに行えるので、均一に揚げられます。揚げ物に苦手意識のある人にもおすすめです。

オークスの「ウチクック クイックフライヤー」は揚げ物鍋でありながら、使用済み油のろ過や保存もできる機能性の高い商品です。お鍋を2つ上下に組み合わせたつくりになっていて、1つの鍋で揚げ物をして、もう1つの鍋にろ過フィルターをセットすればオイルポットとして利用できます。調理器具をコンパクトにまとめたい人におすすめです。

ビタクラフトの「アップル両手鍋」は、熱伝導率が高く冷めやすいアルミニウムと、保温力に優れ冷めにくいステンレスの長所を掛け合わせた多層構造でつくられています。その結果、熱伝導性と蓄熱性の高さを実現しています。丸く深めのスタイリッシュなデザインはおしゃれなだけでなく、油が飛び散りにくいというメリットもあります。

ウルシヤマ金属工業の「ステンレス揚げ鍋」は底面を厚く、側面を薄く加工しています。そのため、しっかりと保温性をもちながらも軽さがあり取り扱いやすいです。ステンレスはサビにも強いので耐久性も抜群。使い勝手がよく、コスパのいいステンレスの揚げ物鍋を探している人におすすめです。

創業70年以上の燕三条のキッチンブランドである遠藤商事の銅製の揚げ物鍋です。プロの料理人から愛用される理由は、すぐれた品質でありながら求めやすい価格であること。銅の鍋は蓄熱性が高く、一度に揚げ物を多く揚げても温度が下がりにくいです。お子さんが多いファミリーなど、一度にたくさんの揚げ物をする人におすすめです。

和平フレイズの千歳シリーズの「純銅 揚げ鍋」は、銅製で直径20cmの揚げ物鍋です。蓄熱性にすぐれた銅製なので、温度が一定に保たれおいしい揚げ物がつくれます。注意点としては、ガス火専用なのでIHコンロでは利用できないことです。また、洗い終わったらすぐ拭き、湿度の低い場所で保管するなど手入れに気を使うため、まめな手入れが苦にならず揚げ物にこだわりのある人におすすめです。

富士ホーローの揚げ物鍋は、シンプルでスタイリッシュな見た目でありながら、フードや温度計が付属していて機能性にも優れています。直径16cmとやや小ぶりなので、お弁当用に小さめのサイズの揚げ物をするのに適しています。フードは調理中の油の飛び散りを防ぐほか、鍋敷きとしても使用できます。IHコンロの使用も可能ですが、揚げ物モードは不可なので注意しましょう。コンパクトで見た目がおしゃれで、卓上コンロに揚げ物鍋を置いて串揚げを楽しむこともできそうです。

デザイン性と品質の高さでファンの多いル・クルーゼのホーロー鍋です。揚げ物だけでなく、炊飯や煮込み料理にも使えます。カラフルなカラーバリエーションがあり、自宅のインテリアにマッチしたものを選べます。センスが良く、多機能な揚げ物鍋が欲しい人におすすめです。

富士ホーローの角型の揚げ物鍋です。コンパクトですが横長なので、エビフライやアスパラガス、春巻きなどの長い揚げ物がしやすいです。バットとスノコ網がついているので、揚げ物に必要な調理道具が一通りそろいます。また、細長い形なのでオイルポットに油を移し替えるときにもこぼれにくいです。

揚げ物鍋を買う前に知っておきたいこと

北山さんに、揚げ物鍋を買う前に知っておきたいことを教えていただきました。

「揚げ物鍋の一番のメリットは安全性の高さです」と北山さん

揚げ物鍋を使うメリット・デメリット

揚げ物鍋をもたずに、自宅のお鍋やフライパンで揚げ物をしている人もいるでしょう。揚げ物鍋とお鍋やフライパン、それぞれのメリットとデメリットをまとめました。

	揚げ物鍋	フライパンやお鍋など
メリット	・安全性が高い ・油を多く使うので、おいしい揚げ物を短時間でつくれる	・少量の油で揚げ物ができる ・調理器具を増やさなくてすむ
デメリット	・場所を取る ・油を使う量が多いので、処理を考える必要がある	・安全性が揚げ物鍋よりも低い ・テフロン加工などの劣化が早まる恐れがある ・油はねしやすい

揚げ物鍋は安全性が高いので、安心して揚げ物ができる

揚げ物はほかの調理法に比べて、油が高温になりますので注意が必要です。揚げ物鍋は安全性を考えられていて、ぐらつかないように厚みがあり安定感をもってつくられています。

一人暮らしの人は小さなミルクパンなどで揚げ物をすることがあるかもしれません。しかし、揚げ物を想定してつくられていないので、傷みやすく持ち手に熱が伝わってしまうなど不便な点もあります。

なお、お弁当をつくるために少しだけ揚げ物をしたい場合は、揚げ物鍋ではなくマルチポットを活用するのもいいでしょう。マルチポットは底面積が狭く高さがあるので揚げ物にも向いています。ただし、持ち手が下向きについているものが多く、ガスの強火で使用すると持ち手が熱くなったり壊れたりする原因になります。注意してください。

「マルチポット」の選び方やおすすめ商品について、詳しくはこちらの記事でも紹介しています。

あると便利な揚げ物鍋の機能

揚げ物鍋はさまざまな便利機能がついたものもあります。おもな機能をまとめたので確認してみましょう。

機能	写真	特徴
フード		ドーム型になっていて、鍋にかぶせて使用することで、油の飛び散りを防ぐ
油切り網		揚げ物を載せておくと、油を切ってくれる。鍋に網を引っ掛けるタイプやフタの裏が油切り網になっていることが多い
温度計		油の温度が一目でわかる。フタなどについているケースが多い
注ぎ口		油をオイルポットなどに注ぎやすくする

フードは油の飛び散りを防ぐため安全性が高く、調理後の後片付けが楽です。揚げ物に慣れてくると、中が見えにくく邪魔に感じる場合もあるので、取り外しができるタイプがおすすめです。

油切り網が付属していると、バットや網などの調理器具を別途用意する必要がないので、お弁当づくりで少量揚げたいときに便利です。

また、揚げ物料理は温度を一定に保つことが大事なので、温度計がついている方が使いやすいです。注ぎ口がついているものは、使い終わった油をオイルポットに注ぐときにこぼれにくいので手間がかかりません。

温度計がついているタイプは、温度を確認しながら揚げ物をしやすい

揚げ物鍋に関するQ&A

最後に、揚げ物鍋に関するよくある質問に、北山さんに答えていただきました。

「揚げ物料理に苦手意識がある人こそ、揚げ物鍋を活用してほしい」と北山さん

Q. 揚げ物鍋と油をきれいに保つ、処理方法・洗い方は？

A. 揚げ物鍋を使い終わったら、残った油は温度がある程度下がってからオイルポットに移しましょう。そして、洗う前にキッチンペーパーなどでしっかりと油を拭き取りましょう。また、残った油は炒め物など、揚げ物以外の料理にもどんどん使っていきましょう。その方が油が酸化する前に消費できます。

「オイルポット」の選び方やおすすめ商品について、詳しくはこちらの記事でも紹介しています。

Q. 揚げ油は何回まで使っていい？

A. オイルポットなどに入れて、油が酸化しにくいように保存していれば、2～3回は使用できます。何回か使用するとにおいや粘りが出てくるので、そうなってきたら使用をやめましょう。また、調理中に揚げかすをこまめに取っておくと、油が汚れにくくなるので長持ちしやすいです。

「揚げかすはマメに取り除くと油が汚れにくく、天かすとして活用もできます」と北山さん

Q. 安い揚げ物鍋と高い揚げ物鍋の違いは？

A. ステンレスや銅などは価格が高い傾向があり、高い揚げ物鍋の方が蓄熱性が高く、料理が成功しやすいです。性能のいい高い揚げ物鍋の方が失敗しにくいため、苦手意識を克服しやすいと思います。
料理が苦手な人ほど、思いきっていい調理道具をそろえるのもおすすめです。

Q. 揚げ物鍋の上手な使い方は？ おいしく揚げ物を揚げるコツは？

A. 揚げ物鍋は揚げ物だけでなく炒め物も可能です。揚げ物をした後にオイルポットに油を移しても、揚げ物鍋には油が付着しています。その油を利用してきんぴらごぼうなどの炒め物をするのもいいでしょう。

おいしく揚げ物を調理するコツは、例えば天ぷらなら衣をつけすぎないこと、衣の温度を冷たくしておくことが大事です。衣は粘着性が出やすく、そのまま揚げるとボテッとした仕上がりになってしまうからです。そして、油に入れたらあまり触らずに待つことも大事です。
また、野菜と肉や魚などを揚げる場合は、油を汚さないようにまずは野菜から揚げるようにするのがコツです。

揚げ物鍋があれば、家庭でも気軽に天ぷらに挑戦できる

Q. 揚げ物に適していないのはどんな鍋？

A. 素材としてはアルミなどの薄い鍋は危険なので使用しないようにしてください。特にガス火の場合は、底辺の面積が狭くてぐらつきやすいものや、高さがあるものは倒れてしまう危険性があるので注意しましょう。

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まとめ

揚げ物鍋は直径18cm以上だと、幅広い揚げ物にチャレンジできます。おもな素材は鉄、銅、ステンレス、ホーローなどです。もっとも多く使われているのは鉄で、揚げ物の味にこだわるなら銅がおすすめです。手入れがしやすいステンレスや見た目がおしゃれなホーローも人気があります。

揚げ物鍋は安全性にすぐれていて、便利な機能がついているものが多いため、安心して揚げ物ができます。揚げ物に苦手意識のある人こそ、揚げ物鍋を活用してみましょう。