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【鑑定士監修】着物買取サービスの見分け方、相場を徹底解説!大手5社比較も

着物MV

本記事は、提携する企業のプロモーション情報が含まれます。掲載するサービス及び掲載位置に広告収益が影響を与える可能性はありますが、サービスの評価や内容などはyour SELECT.が独自に記載しています。(詳しくはAbout Usへ)

目次

若い頃に買ったり、両親から譲り受けたりして、今はタンスに眠っている着物はありませんか?  保管場所に困ってしまい、売りたいと考えているけれど、ネットで調べるとたくさんの買取業者が存在し、どうやって選べばいいのかわからない。知識がないからだまされそうで怖い……。

人生で何度もあることではないからこそ、ちゃんと評価してくれる買取業者にお願いしたい。そう考えている人も多いのではないでしょうか。

そこで大阪府吹田市にあるリサイクル着物のセレクトショップ「Kimono小夏」の店主、吉井斉子さんに、着物買取業者の選び方や売買の際に注意すべき点をお聞きしました

リサイクル着物鑑定士/着付け師/着付け講師/着物スタイリスト/Kimono小夏店主
吉井斉子さん
吉井斉子
日本舞踊をしていた祖母の遺品整理で手にした大量の着物をきっかけに、着物のリメイクを始める。2007年に吹田市関大前に着物のリメイクアイテムを販売する「小夏」を開業。翌年には古物商許可を取得し、着物の売買をスタート。着物の買い付けを通じて着物への造詣を深めていく。2018年には「¥1000 Kimono彩夏」をオープン、2020年に現在の江坂に「Kimono小夏」を移転。幅広い層に着物の魅力を伝えるため、リサイクル着物鑑定士に加え、着付け講師や着物スタイリストなどの活動もしている。

着物鑑定のプロが教える

買取業者を選ぶ4つのポイント

「着物買取」で検索すると、ネット上に現れるのは高額買取の文字の羅列。すべてチェックする時間もないし、何を基準に選べばいいかわからないという方のため、着物鑑定のプロフェッショナル、吉井斉子さんに業者選びのポイントを伺いました。

<買取業者を選ぶ4つのポイント>

  1. 着物専門の鑑定士による査定かどうか
  2. 実店舗があり、店頭買取に対応しているか
  3. 販売も自社で手がけているか
  4. 査定料の無料範囲を確認

1. 着物専門の鑑定士による査定かどうか

着物買取の前提条件ともいえるのが信頼できる鑑定士による査定の有無です。実際は着物鑑定士という資格はなく、経験を積むことで知識や鑑定眼が養われていきます。着物の査定には素人では見分けがつきにくいポイントが数多く存在し、相応の経験値なしに適正価格はつけられません。

経験の浅い担当者に当たってしまうと、的はずれな査定額を提示されたり、いちいち本部にお伺いを立てたり、最悪の場合は買い叩きや押し買いといったトラブルに巻き込まれてしまう可能性もあります。

大切なのは、査定について筋の通った説明を、納得するまでしてもらえるかどうか。その確率を高めるためには、知識や経験値の豊富な鑑定士が多く在籍する業者を選ぶことです。総合買取業者でも着物の専門部門をもっていれば実績のある鑑定士が在籍していますが、一番のおすすめは着物専門の買取業者です。

「知識と経験なしに着物の査定はできません」と話す吉井さん

「知識と経験なしに着物の査定はできません」と話す吉井さんは年間100件以上の着物買取に携わる

2. 実店舗があり、店頭買取に対応しているか

着物の買取方法には、「出張買取」「店頭買取」「宅配買取」と大きく3つの種類があります。宅配買取は対応エリアも広く、提携の宅配キットで送るだけと、利用者にとって簡単で手間なしという大きなメリットがあります。ただし、宅配買取だけを行っている業者は、必ずしも1枚1枚ていねいに鑑定しているとはかぎりません。無料でいいから引き取ってほしい場合には便利ですが、適正価格でしっかり買取をしてほしい方にはおすすめできません。

その点、不手際があった場合も直接の応対が避けられない実店舗を構える業者は、営業を継続するためにも、信頼を損なう取引をすることはないと考えられます。誠実度を測るうえで、実店舗を構え、店頭買取にも対応している業者をおすすめします。 下に買取方法のそれぞれのメリット・デメリットを一覧にまとめましたので、参考にしてください。

買取方法の種類

メリット デメリット
出張買取 ・自宅に査定スタッフが来てくれるため負担が少ない
・着物以外にも査定してほしいアイテムがある場合、一緒に査定してもらえる
・知らない人を自宅に招き入れることに不安がある
・出張できないエリアがある
・貴金属など、着物以外の買取を強要する押し買いトラブルの可能性がある
店頭買取
(持込買取)
・査定スタッフとの対面だから、その場で疑問を解消できる
・買い取ってほしいものだけを持ち込むので「押し買い」の危険がない
・運搬の手間がかかる
・持ち込みに対応した拠点窓口が限られている
宅配買取 ・専用の宅配キットに詰めて送るだけなので手間が少ない
・対面が苦手な人に向いている
・全国対応の場合が多い
・査定完了や入金までに時間がかかる
・宅配キットを取り寄せて査定する場合は2週間かかることも
・キャンセルした場合の返送料が自己負担となることが多い

3. 販売も自社で手がけているか

着物買取の業者の中には、自社で買い取った着物を業者専門市場に一箱単位のどんぶり勘定で流している業者が少なからずあります。その場合、市場の適正価格を認知していないこともあり、ていねいな査定は期待できないでしょう。自社で買い取った着物は、自社で値付けして販売も行っていることが基本。1枚1枚を自らの経験に基づいた値付けをすることで、需給バランスを的確に把握し、売る人にも買う人にもうれしい売買を行うことができます。

大切なお着物は1点1点ていねいに査定します

「大切なお着物は1点1点ていねいに査定します」と売り主の気持ちにも寄り添う吉井さん

4. 査定料の無料範囲を確認

近年の買取業者は査定料無料がほとんどですが、まれに有料の業者もいるので事前に確認しておきましょう。また出張買取でトラブルに発展したという話も聞きます。例えば、査定してもらった着物に査定額がつかなかった、提示した査定額に納得がいかず買取をキャンセルしたなど、出張したものの業者サイドに成果がなかった場合、出張手数料を請求されたというトラブルです。最初に問い合わせをするときに、買取にならなくても無料であるかどうかは確認しておきましょう。

編集部がセレクト!

大手買取業者のサービスを比較

続いて、全国的に知名度の高い大手買取業者のサービス内容を編集部が徹底比較! 業者選びの大事なポイントである、実店舗があり、着物専門の鑑定士が在籍している買取サービスのみをピックアップしています。気になる買取方法や店舗エリア、出張エリアなどもあわせてご紹介します。

買取方法 オンライン査定 着物の自社販売 査定料 出張手数料 出張買取対応エリア 店舗エリア 宅配買取時の査定期間 宅配キャンセル時の返送料 公式サイト
バイセル 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 × 無料 無料 全国対応 東京、神奈川、愛知、大阪など 1週間程度 自己負担 詳細
福ちゃん 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 × 無料 無料 全国対応 東京、神奈川、大阪、愛知など 1週間程度 無料 詳細
ザ・ゴールド 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 × × 無料 無料 全国対応 東京、北海道、東北、中国・四国地方など 1週間程度 自己負担 詳細
ファンタジスタ 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 × 無料 無料 東京、神奈川、千葉、埼玉 東京 2~3日程度 自己負担 詳細
銀座きもの青木 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 無料 無料 関東エリア 東京 2~3営業日 自己負担 詳細

出張買取の満足度No.1(※)「バイセル」

出典:https://buysell-kaitori.com/kimono/

買取方法 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 オンライン査定 ×
着物の自社販売 査定料
出張手数料
無料
無料
出張買取エリア 全国対応 店舗エリア 東京、神奈川、愛知、大阪など
宅配買取時の査定期間 1週間程度 宅配キャンセル時の返送料 自己負担
公式サイトへ

CMでの認知度も高く、年間20万件以上の出張訪問を行っているバイセル。査定額が高めに設定できるのは、買い取った着物はおもに自社市場で業者に卸売するため。スタッフ数が多いので女性の査定スタッフが希望の場合は指名できるのは大きなポイント。店舗は東京、神奈川、大阪、愛知などのアクセス至便なロケーションに16店舗と大都市圏に集中しているのが特徴。自宅の近くに店舗や拠点があれば、即日査定も可能とスピード感をもってスムーズに対応してくれます。

※ 2021年10月6日~7日、ゼネラルリサーチによるインターネット調査より

着物買取の実績豊富「福ちゃん」

出典:https://www.fuku-chan.info/

買取方法 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 オンライン査定
着物の自社販売 × 査定料
出張手数料
無料
無料
出張買取エリア 全国対応 店舗エリア 東京、神奈川、愛知、大阪など
宅配買取時の査定期間 1週間程度 宅配キャンセル時の返送料 無料
公式サイトへ

これまでに600万点以上の着物を買取しているからこそ、査定技術が高いと評判に。卸売市場に着物の専門販路を持っているのも大きな強み。年間10万点以上の着物を卸しており、卸業者に対して強気の価格設定ができるため、買取価格も高めに設定することが可能に。シミやカビ、シワがあるなど、多少状態の良くない着物でも需要のある市場を見つけて卸すノウハウがあり、他社で買取不可となった着物も買取OKというケースも。買取金額30%アップやQUOカードプレゼントなど月ごとにキャンペーンをしているので、こまめにウェブをチェックしましょう。

全店直営の高レベルサービス「ザ・ゴールド」

出典:https://www.the-gold.jp/item/kimono/

買取方法 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 オンライン査定 ×
着物の自社販売 × 査定料
出張手数料
無料
無料
出張買取エリア 全国対応 店舗エリア 東京、北海道、東北、中国・四国地方など
宅配買取時の査定期間 1週間程度 宅配キャンセル時の返送料 自己負担
公式サイトへ

全国で70店舗を誇るリユース業界でも大手といえるザ・ゴールド。店舗はすべて直営で東京都、北海道、北陸や中部、中国・四国地方など広く店舗を展開しているのも強み。査定士ごとにバイヤーランクをつけたり、定期的にテストを行ったりと業界でも屈指の研修制度で査定士を鍛えているから目利きは確か。ブランド品・貴金属・アクセサリー・腕時計・骨董(こっとう)品など着物以外の商材も幅広く査定できるため、着物以外にも買い取ってほしいアイテムがある方にはうってつけの買取サービスです。

着物専門だからこその信頼感「ファンタジスタ」

出典:http://kimono.recycle-fantasista.com/

買取方法 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 オンライン査定 ×
着物の自社販売 査定料
出張手数料
無料
無料
出張買取エリア 東京、神奈川、千葉、埼玉 店舗エリア 東京
宅配買取時の査定期間 2~3日程度 宅配キャンセル時の返送料 自己負担
公式サイトへ

東京の日本橋と千駄木に店舗のあるリユース着物専門店。全国で宅配買取にも対応。出張買取は東京・神奈川・千葉・埼玉などが中心で、対応できない地域もあるので事前に確認が必要。着物買取講習会の講師や他社のコンサルティングを担うなど、経験・知識ともに豊富なベテラン鑑定士が在籍しているのが一番の強み。さらに定休日がなく、年中無休で対応してもらえるのも魅力です。買取から販売までを自社で手がけることで、中間マージンを省いて高価買取を実現しています。

着物専門店の買取部門「銀座きもの青木」

出典:https://www.kimono-aoki.jp/purchase

買取方法 店頭買取(持込買取)、出張買取、宅配買取 オンライン査定
着物の自社販売 査定料
出張手数料
無料
無料
出張買取エリア 東京、神奈川、千葉、埼玉 店舗エリア 東京
宅配買取時の査定期間 2~3営業日 宅配キャンセル時の返送料 自己負担
公式サイトへ

良質なリユースの着物を専門に扱う店舗だけに、買取は正絹や麻、木綿といった天然素材の着物のみ。さらに店舗は銀座に1店舗のみとハードルが高い印象がありますが目利きは確か。大事にしていた着物を託すにはうってつけの専門店といえます。銀座の店舗へ持ち込む場合、担当者が出張買取で不在の場合もあるので事前予約をした方がベター。スマホやPCから写真を送るだけで査定してくれる簡単写真査定もあるので、買取査定の前に気軽に試せるのも魅力です。買い取った着物は銀座の着物専門店やオンラインショップで販売されています。

着物を売る前に知っておきたい基礎知識

着物を売りたいのに、着物のことを何も知らないというのは避けたいものです。ここでは着物の種類や格といった基本的なことと、どのように相場が決まっていくのかなど、事前に知っておくと役に立つ情報を紹介します。

着物の種類と「格」について

着物にはさまざまな種類があり、どのようなシーンで着用できるのかといった「格」があります。まずご自身が持っている着物がどの種類に該当するかを知っておきましょう。なお下の表は、上から格が高い順になっています。

着物の種類 説明
黒留袖 五つ紋が入った地色が黒の留袖。既婚女性の第一礼装。結婚式や披露宴などで親族が着用
色留袖 地色が黒以外の留袖。未婚・既婚問わず着用できる。第一礼装=五つ、準礼装=三つ、略礼装=一つ、と着用シーンにより紋の数が異なる
振袖 未婚女性の第一礼装。他の着物に比べて袖が長い。成人式、結婚式で着用
訪問着 上半身と裾に絵羽模様が入る着物。未婚・既婚問わず着用できる。準礼装から略礼装に当たり、結婚式やパーティなどの社交用に
付下(つけさげ) 訪問着を簡略化した着物。柄がすべて上を向くように染められている。訪問着よりやや格が下だが、ほぼ同格とされている
色無地 黒以外で一色染めされた着物。ふだん着、おしゃれ着として使え、紋が入ると礼装用としても着用できる
小紋(こもん) 細かい模様が上下方向関係なく入った着物。一部の江戸小紋を除き礼装・正装としては着用できない。お稽古事やおしゃれ着に
御召(おめし) 御召糸(おめしいと)を使って織った着物。生地の表面に細かいしぼがある。観劇や食事会、お稽古事など幅広く活躍
紬(つむぎ) 紬糸を用いた織の着物。結城紬・大島紬など紬が多く作られる地域の名前が付けられている。ふだん着やおしゃれ着として人気
吉井斉子さんプロフ

当店では訪問着、留袖、色留袖、色無地、振袖、付下げなどフォーマルに対応する着物から、小紋や紬などの日常着、帯やその周辺小物、反物、バッグや草履といった和装小物まで、基本的には状態の良いものは買取が可能ですが、買取対象が着物と帯のみの業者も多いので、事前に確認しておきましょう。喪服や地味なウールの着物、身丈の短い羽織・コート、使用済みの肌着や足袋は需要が見込めないため、売れる可能性は低いのが現状です。

着物買取の相場について

着物は骨董品のように、古ければ古いほど価値が上がるものではありません。買い取った着物はリサイクル市場を通じて必ず誰かが着用することになり、必然的に新しい商品の需要が高い傾向があります。「100万円で購入したお品だから」「有名な作家物だから」など、購入時の価値をそのまま査定に反映してもらいたい気持ちは十分に理解できますが、残念ながら汚れやシミ、カビなどがついた状態の悪い着物は、査定額がつかないケースもあります。

逆に、たとえポリエステル製の着物でも未使用品、ノーブランドでも2000年以降の購入品など、仕立て直しやクリーニングの必要がなく、手を加えず着用可能なものは査定額が高くなる傾向があります。

このように必ずしも購入時の金額が査定に反映されるとはかぎりませんので、納得がいかない場合は、他の業者で見積もりを取る、リメイクを考えるなど、他の選択肢もあります。判断を急がず、十分に検討したうえで気持ちのいい取引を心がけてください。

古ければいいというものではありません

「着物は骨董品ではなく、誰かが着用するための実用的なもの。だから古ければいいというものではありません」(吉井さん)

買取相場は需要と供給のバランスで決まる

1960〜70年代は高度経済成長期の好景気を背景に、着物がよく売れた時代です。また嫁入り道具として着物をそろえる慣習がまだ残っていたこともあって、現在の市場に出回っている着物はこの時期の購入品が圧倒的に多く、リサイクル着物の流通の場では供給過多の状態です。

リサイクル着物も他のマーケットと同様に、需要と供給のバランスで商品の価値=価格が決定されます。つまり、供給過多の着物は値がつきにくく、需要の高い着物は高値が期待できます。

例えば、「大島紬」は世界三大織物にも数えられる有名ブランド紬ですが、実は非常に流通量が多く、思いのほか値が上がりません。一方、知名度は低いものの「牛首紬」や「白山紬」は、流通量が少ないことから高値で取引されます。名の知れた紬の中でも「結城紬」のように流通量の少ないものもあり、買取価格は知名度ではなく、希少価値が高いかどうかにより左右されるといえるでしょう。

結城紬

大島紬より希少価値の高い「結城紬」は高値がつく可能性が高い

着物相場の情報はうのみにしない

ネット上で“正絹の訪問着なら相場はいくら”などの記事が散見されますが、個人的には疑問を感じることも多々あります。プロの知識と経験に基づいた査定額はあまりに複雑で、相場といえるほどの平均値は存在しないというのが本音です。

もし、どうしてもご自分の売りたい着物の相場が知りたい場合は、ネットのリサイクル着物ショップやフリマアプリなどで、類似品の売価を調べるという手はあります。そこからマージンを差し引くと、おおよその値頃感は把握できるのではないでしょうか。

プロに聞く!

鑑定士はここを見ている

リユース品の中でもとりわけ査定が難しいとされる着物の鑑定。プロの鑑定士はどこを見て査定額を決めているのか? 着物の状態やサイズ、証紙や落款の有無、振袖の買取条件など、チェック項目を教えていただきました。

<鑑定士がチェックする6つのポイント>

  1. 着物の状態
  2. 着物のサイズ
  3. 着物の色柄
  4. 証紙の有無
  5. 作家物・ブランド着物
  6. 振袖は長襦袢がセットでそろっているか

1.着物の状態

着物の生地(絹)は非常に繊細で、着用していなくても経年劣化があります。ゆえに、査定額に直結するのは着物の状態です。仕立て直しやクリーニングの必要がなく、手を加えず着用可能な未使用品、新古品は査定額が高くなる一方、裏地の変色やシミ、カビ、傷みなどがあるものは、たとえ購入金額が高い着物でも査定額がつかないケースもあります。汗をかきやすい首やワキは特に、管理状態が悪いとシミやカビができやすく、鑑定時には細かくチェックします。

また、十分に湿気対策ができていない着物は縮んでしまうこともあり、素人では見定められないこれら着物の状態を鑑定するのがプロの仕事です。「着物の管理方法」を後述していますので、ご自身の管理状態を一度確認してみてください。

シミ

素人が一見しただけではわからない細かいシミやカビも査定に大きく影響する

2.着物のサイズ

1960〜70年代以前の着物は当時の平均体形をベースに縫われたものが多く、現代の女性の体格には小さすぎます。「身丈(=仕立て上がりの着物の長さ)」は着付け時に帯周りで多少の調整がききますが、「裄丈(ゆきたけ)(=首の後ろの付け根から肩を通って手首までの長さ)」についてはごまかしようがありません。

昔より身長も手の長さも伸びた現代女性のニーズを考えると、やはりサイズの小さいものは売れ残る可能性が高く、おのずと査定額は低くなってしまいます。需要の高い身丈160cm以上、裄丈68cm以上の着物は高値がつきやすいといえるでしょう。

写真の小紋は身丈約152cm、裄丈約63cm

写真の小紋は身丈約152cm、裄丈約63cm。サイズの小さな着物は売れにくいのが現状

3.着物の色柄

着物の状態・サイズに加え、色柄も査定額を左右するチェックポイントです。洋服に比べると流行の移り変わりは緩やかですが、その時期のトレンドがあることも確かです。一例を挙げると、1960〜70年代の訪問着は入学式・卒業式用に購入されたのでしょうが、ピンクが圧倒的に多く、現在は供給過多。一方で、近年人気が高いブルーグレーの着物は品薄状態とあって、買取価格は高くなります。

実は、最近の若い女性は古典柄や地味な色味を好まれる方が非常に多く、若い方は派手な色柄が好きだろうという先入観はまったくの間違いです。昭和40年代に大流行した蛍光オレンジや蛍光グリーンの着物や、大きな花柄が描かれた帯などは、流通量が多い上に人気がありません。近頃のトレンドに合った色柄は、やはり平成に入ってから販売された新しめの着物です。

また、戦前に作られたアンティーク着物は一定の愛好家が存在し、状態が良ければ高値が付く可能性が高いです。

アンティーク着物

アンティーク着物は戦前に作られたレトロ柄の方が需要が高い

4.証紙の有無

伝統工芸品として有名な「紬」「友禅」「上布(じょうふ)」など。その上に産地名がついた大島紬や結城紬、京友禅や加賀友禅などは、着物に詳しくない方でも耳にしたことがあると思います。証紙とは、もともと反物の端につけられたもので、有名産地・伝統工芸品・生地の品質において厳格な審査基準を満たしたことの証。いわば、品質と価値の証明書とあって、着物とセットでお持ちであれば査定額は、ほぼ確実に上がります。素人でも一目でわかる品質保証なので、あるにこしたことはありません。ただし、証紙があってもシミやカビがついていたり、汚れがひどい場合は、査定額がつかないケースもあることは覚えておきましょう。

証紙は品質と価値の証明書

反物の端につけられた証紙は品質と価値の証明書

5.作家物・ブランド着物

友禅染の羽田登喜男さんや木村雨山さん、江戸小紋の南部芳松さんなど、人間国宝に認定された有名作家の作品は間違いなく作家物として高額取引されます。購入時には、前述の証紙や証明書がついていたはずですので、セットでそろっていれば査定額のアップは間違いありません。

ただ、作家物といっても、専門家の私たちも認知しない伝統工芸士や産地の職人さんが手がけた着物も多く販売されています。基本的には着物の状態とサイズを優先した査定になることが多いので、事前に自ら調べておくと交渉に役立つでしょう。また、作家物には着物に落款が押されており、証紙や証明書がなくても落款から識別できるケースもあります。

落款

落款はおくみ(前身頃の重なり合う、打ち合わせ部)や衿先など見えないところに刻印されている

6.振袖は長襦袢がセットでそろっているか

袖の長さがほぼ一定の訪問着や小紋、留袖に対し、振袖は袖丈が長いのが特徴です。通常は肌に直接触れる長襦袢は需要が高いとはいえませんが、当店では振袖にかぎり、必ず長襦袢とセットでの取引となります。理由は、着物と長襦袢の袖丈を同じ長さにそろえる振袖の場合、袖の長さが合わない長襦袢では着付けが成立しないからです。ただしあくまでも当店の場合ですので、振袖単体での買取を希望する場合は問い合わせてみましょう。

また、振袖の用途は成人式など未婚女性の晴れ着とあって、色柄にゆるやかなトレンドがあり、その時期の人気カラーは査定額が上がる可能性があります。

振袖は袖丈を合わせた長襦袢とセットが基本

「振袖は袖丈を合わせた長襦袢とセットで持ち込む必要があります」と吉井さん

プロが教える!

高く買い取ってもらうコツ

同じ着物を売るのでも、ちょっとしたポイントを押さえることで査定額がアップすることも!
ここでは吉井さんに、より高く買い取ってもらうためのコツをお聞きしました。

<吉井さんに聞く、着物を高く買い取ってもらう3つのポイント>

  1. 正しい管理方法で着物のケアを
  2. オンライン相見積もりを利用する
  3. 作家物、ブランド着物は事前に調べておく
「ご自分の大切な財産を守るためにも、日頃から着物のケアを心がけてください」

「ご自分の大切な財産を守るためにも、日頃から着物のケアを心がけてください」(吉井さん)

1.正しい管理方法で着物のケアを

着物の大敵は湿気です。着物の保管には吸湿性や通気性が高い和紙製のたとう紙が使われているのも、湿気を吸収し、カビの発生を抑えてくれるからです。ただ、たとう紙にも吸湿の限界があり、最低でも年に一度は交換しましょう。

本来はカラッとした陽気が続く季節に虫干しといって、全ての着物を着物用ハンガーにかけ、風通しのいい場所で半日以上陰干しにするのがベストです。一気に虫干しするのは難しいという方は、タンスの引き出しを開けて風を通す、たとう紙のままでも引き出しから外に出す、定期的に順番を入れ替えるなどでも、効果的な湿気対策になります。

着物を保管するたとう紙

着物を保管するたとう紙は、ネットで10枚1500円程度で購入できるので定期的な交換を

収納は通気性の良い桐のタンスが最適とされていますが、かさばるうえに高額です。最近はコンパクトな桐のケースや安価な不織布製のケースなど、さまざまな着物専用の収納用品が販売されていますので、ご自宅に合わせて選んでください。そして、防虫剤は直接着物に触れると変色の要因になることがあるので、必ずたとう紙の外に入れるようにしてください。

また、意外と無頓着な方が多いのですが、着用後のケアも着物を美しく保つ重要な対策です。食事中の食べこぼしや着用中の汗は、シミやカビの最大の要因。胸周りや袖、上前から裾などに汚れがないか、収納前にしっかり確認しましょう。小さな皮脂汚れであれば、ベンジンを含ませたタオルで汚れ部分をこすりとり、乾いたタオルで拭き取れば、落ちることもあります。ただ、やり方を間違えると返って汚れを広げてしまうリスクもあります。下手に手出しはせずに、そのまま和服専用のクリーニング店に出すことをおすすめします。

2.オンライン相見積もりを利用する

以前、某大手買取業者で約40枚で500円と査定された着物を持ち込まれたお客さまがおられました。実際、高額がつく着物はなかったのですが、相応の量があり、当店では5000円で買い取らせていただきました。このように、業者によっては、査定額の桁が違うこともあり、相見積もりはやってみても損はないでしょう。ただ、出張買取や店頭買取は手間がかかります。無料のオンライン査定なら、複数の業者で一気に相見積もりを取ることも簡単です。最近はオンライン査定に対応している業者も増えてきたので、試してみてはいかがでしょうか。そこで、いい査定額を出してくれた業者、信頼できそうな業者を選定し、改めて出張買取や店頭買取をお願いする流れが効率的だと思います。

相見積もりや下調べがおすすめ

「相見積もりや下調べをしておけば、買取業者との商談にも安心して臨めます」(吉井さん)

3.作家物、ブランド着物は事前に調べておく

作家物やブランド着物の場合、証紙や証明書が保管されていれば、事前にネットのリサイクルショップなどで類似品の販売価格を調べておくことをおすすめします。というのも、提示された査定額が妥当か否かの判断材料として有効だからです。証紙や証明書を紛失してしまったとしても、着物に押された落款から作家が判明するケースもあります。

例えば、加賀友禅は協同組合 加賀染振興協会が運営する公式ホームページで、認定された作家の落款を検索することができます。また、人間国宝など有名作家の落款もネット検索で照合できる可能性は高いでしょう。少しでも高額買取を希望するのであれば、事前の下調べは有利に交渉をすすめるうえで心強い裏付けになるはずです。

よくあるトラブル&回避術

着物買取の現場でよくあるトラブルと、それを回避する方法を吉井さんにお聞きしました。

「押し買い」回避は複数名での応対を

着物買取の出張査定をお願いしたところ、肝心の着物には値がつかないといわれ、強引に貴金属や金券、ブランド品を安値で買い取られた。こういった「押し買い」の被害は近年急増しており、消費者庁でも注意喚起をしています。突然の訪問、電話でのしつこい勧誘は断固たる態度で拒否してください。

ただ、こちらからお願いした出張買取においても、押し買いの被害にあうケースが皆無とはいえません。ご自宅に買取業者を入れる場合は、お一人で対応しないようにしましょう。できれば、ご主人や息子さんなど、男性の同席が望ましいですが、難しい場合は女性だけでも複数名で応対してください。これまでにお伝えしたように、着物の鑑定はとりわけ難しく、知識や経験なしに行えるものではありません。慎重のうえにも慎重を期すつもりで業者選びをしましょう。

悪徳な「買い叩き」が急増中

不当な値段で「買い叩き」をされる被害も、いきなりの訪問買取や電話勧誘などで多発しています。押し買いと同様、怪しい訪問者は絶対に家に上げてはいけません、ただ、買い叩きは今に始まったことではなく、信頼のおける業者を装い、利用者がそれとは気づかずに安値で買い取られている例も数え切れません。怪しいと感じたら相手の会社名や電話番号、住所などの情報を確認するようにしましょう。

着物買取をご希望の際は、売りたい着物の類似品がいくらで販売されているか、リサイクル着物ショップなどで事前に調べておくと安心です。

まだある! 着物買取に関する素朴な疑問

買取業界の中でも、専門性が高くわからないことが多い「着物買取」。そこで吉井さんに素朴な疑問や、問い合せが多い質問について教えていただきました。

Q. 浴衣、喪服、小物など買い取れない商品があると聞きました

A. 買取業者によって異なると思いますが、当店では喪服や地味なウールの着物、使用済みの下着や足袋は買取をお断りしています。これらはマーケットでの需要がないため、他店でも同様ではないかと考えられます。 浴衣は未使用であれば買取ができる可能性が高いですが、使用済みの浴衣は値段がつかないケースがほとんどです。 また、帯、帯揚げ、帯締め、バッグ、草履、下駄、ショールといった和装小物全般も買取が可能です。

Q. フリマアプリで売った方が高く売れる?

A. メルカリなどのフリマアプリは写真を撮って登録するだけと手続きは簡単ですが、着物の状態の良し悪しは個人によって感じ方が違うため、購入された方とのトラブルが心配です。値付けもご自身で行うので、自由に高額設定にはできますが、実際に売れるかどうかは疑わしく、やはり、信頼できる専門業者に任せるのがベストだと思います。

Q. 季節によって売価は変わる?

A. 基本的に大幅な変動はありませんが、春の卒業や入学シーズンはお祝いごとも多くなり、3月の初旬頃はリサイクル着物の動きも活発になります。当店にリサイクル着物を買いにこられるお客さまはお茶やお花をたしなむ方も多いので、一般的な訪問着などは春と秋に動きが出ます。 また、夏を迎える前の浴衣、年末には振袖と、それぞれの着物によって需要が増す時期があることは間違いありません。その時期に品薄の商品ならば、多少色をつけて査定してくれる業者もあるかもしれません。

Q. 査定額を聞いて断ることはできる?

A. 査定額に納得できない場合、断ることは法的にも何の問題もありません。近頃は「買い叩き」などのトラブルも発生していることから、断る場合は明確な意思をもって伝えることをおすすめします。「Kimono小夏」では売買が終了した後のキャンセルは受け付けておりませんが、その旨の説明、および査定額の妥当性についての説明は、しっかり時間をかけてさせていただいています。

Q. シミや汚れがある着物でも売れる?

A. 汚れやシミの程度によりけりで、一概にはいえませんが、値段がつかないケースが圧倒的に多いと思います。ただ、有名な作家物や需要の高い高級品など、クリーニングに出しても採算が合いそうな希少価値の高い商品であれば、相応の査定額が出る場合もあります。

Q. 着物は母の遺品。処分について悩んでいます

A. 大切なご家族の遺品を処分することに抵抗をお持ちの方はとても多いので、お気持ちはすごく理解できます。もちろん、ご自分で着用するのが一番でしょうが、生活習慣の違いや置き場所、そして何より手入れの手間がかかりますよね。着物買取は間違いなく、他のどなたかが着用するためにリサイクルされるもの。ご家族の着物がまた、光を浴びて美しく輝くことを想像すれば、“処分”という罪悪感はなくなるのではないでしょうか。ご家族の遺品を大切に鑑定してくれる、信頼できる業者に相談してみてください。

「ご家族の遺品を売ることに罪悪感を持たれる方も少なくありません」

「ご家族の遺品を売ることに罪悪感を持たれる方も少なくありません」(吉井さん)

まとめ

トラブルのニュースなども増えている着物買取。悪い情報に目が行きがちとなり、漠然と怖いイメージをお持ちの方も多いと思いますが、誠実な業者も多く存在します。

査定の難しい着物買取を気持ちよく進めるためには、業者選びが一番のポイント。知識も経験も豊富な着物専門の鑑定士が在籍する業者を選ぶようにしましょう。店頭買取、出張買取、宅配買取と買取方法もさまざまですが、まずはオンライン査定で相見積もりを取っておけば、おおまかな相場感が把握でき、取引の際にも安心です。

比較的高く売れる着物は、新しいもの、状態が良くサイズの大きいもの、作家物やブランド物など。証紙や証明書がある場合は、必ずセットで査定に出しましょう。また少しでも高く買い取ってもらうためには着物の状態も大切。日常のお手入れや着用後のケア、保管場所に風通しなど、湿気対策やシミ・カビ予防を心がけましょう。

着用しない着物は年々劣化していきます。骨董品のように古いほど価値が上がるわけではありませんので、“眠らせる”のではなく“生かす”。リサイクル着物としてよみがえらせる着物買取を検討してはいかがでしょうか。

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