前編では、長屋なぎささんのキャリアや家族の始まりといった、大切な歩みに寄り添ってきた愛用品をご紹介しました。後編では、40代を迎えた現在の彼女が、「循環」を大切にしながら、娘へと受け継ぐ未来までも見据えた、これから先の10年を共に歩んでいきたいと願うモノたちについてお話を伺います。

REVIEWER

長屋なぎさ

ライフスタイルプランナー

長屋なぎささん

1986年 岐阜県生まれ。 ライフスタイルプランナーとして、企業のディレクションやアドバイザー、ビジュアル監修、ライフスタイルアイテムの商品企画など、幅広く活躍。 二児の母でもある。

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目次

40代を迎え見えてきた「心地よいバランス」

今年40代を迎える長屋なぎささんは、いま、モノとの付き合い方に新たな基準を持っています。それは「循環」と「頑張りすぎないこと」。かつての彼女は、多くの好きなモノを「手元に揃えたい」という欲求に駆られていた時期があったそう。しかし、いまは本当に好きなものを厳選し、現在の自分に必要なくなったものは次の方に繋いでいくことで、身のまわりをクリアに保っています。
また、彼女の言う「頑張りすぎないこと」とは、単なる手抜きではありません。

「頑張りすぎず、でも少しだけ生活の満足度を底上げしてくれる。そんな絶妙なバランスを持っているアイテムを取り入れることが、これからの私にはもっと心地よくなっていくんだろうなと思います」

「頑張りすぎず、でも少しだけ生活の満足度を底上げしてくれる。そんな絶妙なバランスを持っているアイテムを取り入れることが、これからの私にはもっと心地よくなっていくんだろうなと思います」

それは、生活を無理に華やかに見せようと背伸びをしたり、繊細な道具の扱いに神経をすり減らしたりして、心に疲れを溜めないこととも通じます。そんな長屋さんが、これから10年使いたいものをご紹介します。

ライフスタイルプランナー・長屋なぎささんが10年後も使いたいもの①:ハイブランドのバッグ(エピソードを読む

ライフスタイルプランナー・長屋なぎささんが10年後も使いたいもの②:一窯(はじめがま・岐阜県)の水野幸一氏の器

ライフスタイルプランナー・長屋なぎささんが10年後も使いたいもの②:一窯(はじめがま・岐阜県)の水野幸一氏の器(エピソードを読む

ライフスタイルプランナー・長屋なぎささんが10年後も使いたいもの③:お気に入りの調味料(エピソードを読む

娘へ繋ぐタイムレスな名品

これから10年を共にするアイテムとして挙げたのは、エルメスのバーキンやヴィンテージのシャネルといったハイブランドのバッグ。これらは彼女にとって、単なるファッション以上の意味を持つアイテムです。

ブラックが一番しっくりくると、30代に入り気づいたそう

ブラックが一番しっくりくると、30代に入り気づいたそう

「30歳になったタイミングで、自分を鼓舞するためにバーキンを買いました。当時の私にとって、とっても背伸びをする買い物だったけど、なりたい自分を自分の力で叶えたい、そんな気持ちを込めて買ったんです。私はハイブランドのアイテムであったとしても、大切に保管するのではなく、日常のなかで使い込み自分になじませていきたいタイプなので、神経質にならずに使っています。そしていつか、娘に譲ることができたら……。そう思うと、ワクワクするんです」

シャネルのマトラッセはヴィンテージで購入

シャネルのマトラッセはヴィンテージで購入

最近では、幼い娘さんが「おませさん」になってきたという微笑ましい変化も。街を歩いていると、「ママにこのお洋服似合いそう!」と声をかけてくれるなど、母娘でファッションの会話を楽しむ時間が増えてきました。

傷を恐れず使い込んだバッグを、いつか成長した娘が手に取り、また新たな物語を紡いでいく――そんな未来の光景をイメージすることが、いまの長屋さんにとって、モノを選ぶ一つの基準になっています。

ライフスタイルプランナー・長屋なぎささんが10年後も使いたいもの①ハイブランドのバッグ

エルメスのバーキンや、シャネルのマトラッセなど、時代を超えて輝き続けるタイムレスな名品たち。どれも最高級のレザーを使用しているため、使い込むほどになじんでいく経年変化も楽しめる

岐阜の土から生まれた、日常に溶け込む器

これからの10年もずっと使い続けたいと確信しているのが、陶芸家・水野幸一さんの器です。長屋さんの出身地である岐阜県で作陶されているという水野さん。そんなご縁もありSNSで連絡を取り、窯元を訪ねたことで、作品だけでなくお人柄にも深く惹かれたと言います。

料理をおいしく見せるという軸はしっかりとありながら、作風のバリエーションが豊富

料理をおいしく見せるという軸はしっかりとありながら、作風のバリエーションが豊富

「水野さんの作品は、とにかく表情が豊かでシルエットが美しい。でも、決して気取っていないから日常でも使いやすいんです。何を盛っても決まりますし、どんな使い方をするかは使い手のアイデア次第。いくつもの顔を見せてくれる、おもしろさもあるんです」

蓋も平皿として利用できる器も。使い方はアイデア次第

蓋も平皿として利用できる器も。使い方はアイデア次第

長屋さんは、お子さんたちにも、小さいうちから「本物の陶器」に触れるシーンを作っていきたいと考えています。日常的に使うため、時には子どもが割ってしまうこともありますが、それをきっかけに“形あるものは壊れる”ことを学び、大切に扱う心を育んでほしいと願っています。

「いまはまだ勉強中ですが、いつかは自分で金継ぎをして、直しながら使い続けられるようになりたい。そうやって、家族の歴史を器にも刻んでいけたら素敵ですよね」

ライフスタイルプランナー・長屋なぎささんが10年後も使いたいもの②一窯(はじめがま・岐阜県)の水野幸一氏の器

美濃焼の産地・岐阜県土岐市に工房「一窯(はじめがま)」を構え、多角的な表現を追求する水野氏の器。和食にも洋食にも馴染むマットな質感と、モダンなフォルムが特徴

美濃焼の産地・岐阜県土岐市に工房「一窯(はじめがま)」を構え、多角的な表現を追求する水野氏の器。和食にも洋食にも馴染むマットな質感と、モダンなフォルムが特徴

気軽に楽しめる、理想の味への最短距離

長屋さんがこれからの10年も大切にしたいと考えているのは、日々の食卓を支える厳選された調味料たち。みりんや、醤油麹は欠かせない存在です。

調味料が持つ本来の味を確かめるため、味見をすることも

調味料が持つ本来の味を確かめるため、味見をすることも

「調味料は、もし自分に合わなくても買い替えることができるので、新しい味を気軽に試しやすいのが魅力。そんな『味付けの味方』のなかから、本当に気に入ったものを揃えていきたいんです」

良い調味料があれば、料理はシンプルに、そして格段においしくなるというもの。手間をかけすぎずにおいしいご飯が作れることで、家事をする心にもゆとりが生まれます。そんな「頑張りすぎない食卓」を彩る、頼もしい存在です。

日本各地で作られる調味料は、伝統技法を使ったものもあり奥が深い

日本各地で作られる調味料は、伝統技法を使ったものもあり奥が深い

ライフスタイルプランナー・長屋なぎささんが10年後も使いたいもの③お気に入りの調味料

醤油麹やみりんなど、「これがないと味が決まらない」という長屋家の「母の味」を支える必需品。日常的に気兼ねなく使える使い勝手の良さと、素材を生かす確かなおいしさを兼ね備えている

醤油麹やみりんなど、「これがないと味が決まらない」という長屋家の「母の味」を支える必需品。日常的に気兼ねなく使える使い勝手の良さと、素材を生かす確かなおいしさを兼ね備えている

モノを通して、心地よい記憶と感性を次世代へと繋いでいく

インタビューの締めくくりに、長屋さんはしなやかな強さを感じさせる笑顔で、これからのモノとの向き合い方を語ってくれました。

「私にとってモノを持つことは、それを自分ひとりで完結させることではないんです。使い込んだバッグがいつか娘の手に渡って新しい物語を紡ぎ、日々の食卓を支える調味料が子どもたちの『母の味』になる。そうやって、自分の選んだモノが家族の記憶や感性の一部となって、自然に循環していくことに喜びを感じます。頑張りすぎず、等身大の自分になじむ『本物』を選び取ること。その積み重ねが、10年後の私だけでなく、その先に続く家族の景色を、もっと温かく、豊かなものにしてくれるのだと信じています」

お気に入りの器にも、家族の物語を纏っていく

お気に入りの器にも、家族の物語を纏っていく

彼女の手元で育まれるモノたちは、10年後、どんな表情を見せてくれるのでしょうか。いつか娘さんへと受け継がれるその輝きは、彼女が積み重ねてきた、しなやかで誠実な人生そのものを映し出しているはずです。

撮影/wacci 編集・文/藤田華子