周囲を浄化するような透明感と、凛とした存在感が印象的な俳優・高橋春織さん。Instagramの投稿から垣間見える、明るく飾らない人柄も魅力です。今年29歳の彼女に、10年間愛用し続けた特別なアイテムについて、思い出と共に語ってもらいました。

REVIEWER

高橋春織

俳優

高橋春織さん

1997年生まれ。東京都出身。俳優として映画やドラマで活躍する一方、日本大学芸術学部写真学科を卒業し、写真家としても活動。Instagramでは、飾らない日常や、自身で撮影した作品を公開している。

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目次

大切にしているのは「長いこと共にしていく自分を想像できるかどうか」

「今では、モノを買うときにときめきだけでなく、どういう人が作っているのか、歴史や背景についても調べるようになりました。加えて『この先長くこのモノと共にする自分を想像できるかどうか』という視点を大切にして、本当に必要なモノなのかを問うようにしています」

大切にしているのは「長いこと共にしていく自分を想像できるかどうか」

そう語る高橋さんですが、10代の頃には「10年後のことまでは考えていなかった」そう。当時は「かわいい」や「かっこいい」「憧れ」そんな直感的な感覚に動かされてモノ選びをしていたといいます。
しかし10年後の今、“10年選手”としてずっと変わらずにそばにいてくれた大切なモノたち───それは時を経ても光を放ち、失われることのない価値を証明する「名品」でした。

▲俳優・高橋春織さんが10年使ったもの①:ヴィヴィアン・ウエストウッドのラブジャケット

俳優・高橋春織さんが10年使ったもの①:ヴィヴィアン・ウエストウッドのラブジャケット(エピソードを読む

▲俳優・高橋春織さんが10年使ったもの②:Y.NAGATAのデニム

俳優・高橋春織さんが10年使ったもの②:Y.NAGATAのデニム(エピソードを読む

俳優・高橋春織さんが10年使ったもの③:ビリンガムのカメラバッグ(エピソードを読む

袖を通すたびに背筋が伸びる。自信をまとえる「美しい鎧」

「『10年使ったもの』 と聞いて真っ先に浮かんだ」というのがこちらのジャケット。手に入れるきっかけは、ハンドメイド作家(現在)としても活躍するお母さんの存在でした。

ラブジャケットには色々なチェック柄がありますが、シーンを選ばず長く着られることを見越して選んだカラーが大正解。ポイントの赤がお気に入りだそう

「母が服飾の学校を出ていて、パターンから洋服を作る様子を見て育ちました。その影響もあり、昔から“個性的で人とかぶらないもの”に興味があったんです。ヴィヴィアン・ウエストウッドも母が着ているのを見て、『かっこいい!』と思ったのがはじまり。調べるうちにデザイナーのヴィヴィアンのことを知り、『芯のあるパンクな女性像』に憧れを抱くようになりました」

いつかは手に入れたいと思うものの、当時はまだ10代。自分で買える余裕はなく、原宿にあったヴィヴィアン専門の古着屋さんで試着をして夢を膨らませていました。
そんなとき、お母さんに連れて行ってもらったファミリーセールで運命の出会いをします。

まるで仕立てたかのように高橋さんの体にぴったり

「ヴィヴィアンの中でも特に憧れていたのが、ブランドを象徴するアイコニックな『ラブジャケット』。定価ではなかなか手が出せませんでしたが、そのときにサイズ感も、デザインも私にぴったりな一着に出会えたんです」

当時は親戚の集まりやちょっといいレストランに行くときなど、「特別な日に着るとっておきの服」として、大切にしていたそう。

「10代の私にとってまるで鎧のような、着ると自信をまとわせてくれる一着でした。しばらくクローゼットに眠るときもありましたが、友達の結婚式や、自分の大切な節目などでは、やっぱり最初に思い浮かぶのがこのジャケットなんです」

長い間愛用してきましたが、その素材感や美しいシルエットは、驚くほどに当時のままだといいます。しかし、「変化したのは私の方」だと高橋さんは続けます。

「昔はちょっと背伸びして、尖った気持ちで着ていましたが、年を重ねたことで気負わずに着られるようになりました。10年の間に、ちょっとずつこのジャケットが似合う自分になれているのかな、と思います」

これからは特別な日だけではなく、今日のようにデニムに合わせたり、カジュアルに着崩すスタイルに挑戦していきたいという高橋さん。「おばあちゃんになっても着続けたい」という目標と共に、今後の人生にも彩りを与えてくれることでしょう。

俳優・高橋春織さんが10年使ったもの①ヴィヴィアン・ウエストウッドのラブジャケット

ヴィヴィアン・ウエストウッドのラブジャケット

ハート形の襟が特徴の、フェミニンでクラシカルなジャケット。コルセットのようにウエストがシェイブされたシルエットで、女性らしさが際立つデザイン

古着好きだった私に「育てる楽しみ」を教えてくれた一本

デニムフリークでもある高橋さんが「一番相棒感がある」と絶大な信頼を置いているのがこちら。Y.NAGATAというブランドで、学芸大学にあったセレクトショップで購入したそう。

「当時、身につけているアイテムはシンプルなのに、いつもピシッとかっこいい友人がいて、『このかっこよさって何なんだろう?』と不思議に思っていたんです。そんなときに友人に連れて行ってもらったセレクトショップで、おすすめされたがこのデニムでした」

ユニセックスなサイズ感で、どんなトップスに合わせても絶妙な抜け感を出してくれる

「正直、出会ったときには特にビビッときたわけではなかったのですが、店員さんからメイドインジャパンで丁寧に作られていること、履き込んでいくうちにお尻のポケットにアタリが出て線が浮き出てくるよ、という話を聞いて、初めて自分で『育ててみたい』と思ったんです」

「その頃は古着やファストファッションをミックスするようなスタイルを楽しんでいて、モノを買うときに背景を考えるようなことはありませんでした。けれどこのデニムに出会って、『こういうモノの選び方があるんだ』という気づきと、友人が醸し出すかっこよさの秘密がわかったような気がしたんです」

店員さんのいう通り、時を経てポケットにはきれいなアタリが出てポイントになっている

汚れを気にすることなく、アウトドアシーンでも大活躍してくれるというこのデニム。

「川に行ったり、公園で芝生に座ったり、ちょっと泥がついてもそれが味になってくれるという安心感があるから、シーンを選ばずに履ける。生地も徐々に柔らかくなって、体になじむようになりました。今、膝の色が少し抜けてきているんですが、もっと履き込んだら破れたりするのかな? と、これからの変化も楽しみにしています」

「履くとフラットな自分にしてくれる、仕事に出るときも履くと安心する」と語るほど、洋服という枠を超えた、なくてはならない存在

俳優・高橋春織さんが10年使ったもの②Y.NAGATAのデニム

タグ部分には「DENIM COMPANY」の文字が。購入した店員さんからは「岡山県で製造された」と聞いたそう。大量生産ではない「知る人ぞ知る」名品デニム

写真家としての第一歩を支えてくれた「一生モノの親友」

10代前半から女優としてのキャリアを積んでいた高橋さんですが、もうひとつの軸をもつべく日本大学芸術学部の写真学科へ入学します。そのタイミングで手元にやってきたのが「カメラバッグのロールスロイス」とも称される「Billingam(ビリンガム)」のバッグでした。

コンパクトなサイズ感とクラシカルなデザインで、普段使いのバッグとしても優秀

「私が写真学科に入学するということで、親戚のおじさんがプレゼントしてくれました。最初、おしゃれな見た目に『これがカメラバッグなの!?』と驚いたことを覚えています」

「かわいらしい見た目ですが、機能性もばっちり。仕切りの位置を自分で調節できるので、カメラやレンズの大きさに合わせてカスタムできるところが便利なんです。また、防水性が高く、雨くらいなら全然平気。私は大雑把なところもあるので、ガシガシ使ってきましたが、擦れたり破れるということもなく、耐久性は実証済みです」

仕切りは簡単に剥がしてくっつけられる仕様になっていて、カメラやレンズ、フィルムなどの大きさ合わせてフィット感を変えられる

「あまりに使い勝手がいいので、これで通学していたこともあるほど。いつも一緒でしたが、特に思い出に残っているのが19歳のとき。『10代最後の姿を残す』というテーマで同学年の友人をたくさん撮影したんです。その人その人に合うシチュエーションで、雨の中や自然のなか、渋谷のスクランブル交差点など、このバッグと一緒にいろいろな場所に出かけました。今思えば、10代のパワーがあったからこそ実現できたこと。あの頃のがむしゃらな自分に寄り添ってくれたという思い出は、単なる使い勝手のよさだけでなく、ずっと手放せない理由になっていますね」

レザーと真鍮パーツの部分は、経年変化で味が出てきたところも愛おしい

今では機材の量も増え、第一線での登場回数は少なくなってきたそうですが、休みの日にカメラとお財布と携帯を入れて散歩に出かけるなど、変わらずに高橋さんの生活に寄り添ってくれる、一生モノの親友のような存在です。

俳優・高橋春織さんが10年使ったもの③ビリンガムのカメラバッグ

「ビリンガム」は1973年にイングランドで創業したバッグブランド。レザー×キャンバスの上品な見た目に加え、高い防水性と耐久性で、プロの写真家やジャーナリストにも愛用されている

モノに刻まれた思い出は、失われることのない価値になる

10年間手放せなかった品々が教えてくれたのは「時を重ねることで増す価値があること」。愛され続けてきた証である傷や跡は、決してマイナスではなく輝きになるということ。

「一緒に過ごした思い出は、消えることのない価値となって、それぞれのモノに染み込んでいます。同時に私自身も歳を重ねたことで、これらの名品が体になじむようになったのはうれしい変化でした。ヒトもモノも同じで、『経験』を積むことでそれが『味』になり深みを増していくのだと思います」

「このジャケットをもっとカジュアルに着こなせるように、一緒に成長していきたい」そう語る高橋さんの眼差しは、10年先の自分を見つめているよう

好きなモノと誠実に付き合ってきたからこそ身についた審美眼。それは今後の人生をより豊かにするモノ選びにも生かされています。そんな高橋さんが「10年後も使いたいもの」は後半の記事でご紹介します。

撮影/wacci 編集・文/豊泉陽子